小松左京さんが「日本沈没」を世に問うたのは1973年。高度成長が終わりを迎え、オイルショックと狂乱物価で日本人が将来に不安を抱き始めた時代だった◆その22年後、阪神・淡路大震災が発生し、さらに16年後、東日本大震災が起きる。富士山噴火や海溝型の巨大地震も、今では迫り来る現実と認識されている。小松さんがSF小説で予期した日本の大地動乱である◆この人の“警句”も現実になるのだろうか。ツイッター社買収を巡り、世界を驚かせた米テスラ社の最高経営責任者イーロン・マスク氏がツイッターに「日本消滅」とつぶやいた◆いわく「当たり前のことだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」。昨年10月時点の日本の総人口が、前年から過去最大の64万人減少-との総務省発表を踏まえた投稿だった◆国立社会保障・人口問題研究所も「2100年には6千万人程度になる」と推計する。つまり半減。マスク氏は人口減少を「文明にとって最大のリスク」と警鐘を鳴らす◆大富豪であるマスク氏の真意は測りかねるものの、日本の「沈没」も「消滅」もさせてはならない。少子化対策を担う「こども家庭庁」の議論すら遅々としている政治の呑気(のんき)さよ。2022・5・17
