正平調

時計2022/05/23

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〈ヨーロッパたがひにおのが蟻塚(ありづか)を築かむものと食(は)み合ひにつつ〉。今のウクライナ情勢を見るようだが、この歌は1935年の作。詠み人は姫路出身の詩人前田林外(りんがい)である◆時は第2次世界大戦前夜。29年の世界恐慌は米英仏の民主主義を弱体化させると共にファシズムを台頭させ、33年には日独が相次いで国際連盟を脱退した◆林外といえば、与謝野鉄幹の「明星」創刊に参加した浪漫派の詩人。同時期に〈善き人を殺すが常の世となれば身をし投げむか酒を飲まむか〉の歌もあり、もともと争いを好んだ人ではない◆ところが5年後の歌集「盧溝橋」になると様子が違ってくる。〈あなみごとや我が機の爆弾はみなあたりぬ敵の軍備の一つ一つに〉〈祝福すわが智・仁・勇の将兵をわが銃後をわが友邦を〉と勇ましい◆あとがきに書く。この世の中で最も好んだものは「詩と歌と戦争と平和」であり、好きな戦争とは「わが皇軍が行っている聖戦である」と。戦時下という状況が言わせた言葉だろうが、ぞっとする◆民主主義が力を失い、国連が平和維持のために有効な手を打てない現状は、さきの大戦前夜とも重なる。しかし、さらなる戦火の拡大は何としても食い止めねば。「好きな戦争」など誰にもある訳がないのだから。2022・5・23

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