正平調

時計2022/05/29

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散歩には、旅行にない利点がある。次の三つだと姫路市出身のドイツ文学者、池内紀(おさむ)さんは書いていた。一つ。思い立つと、すぐに出られること。二つ。交通費がほとんどかからないこと。三つ。疲れないし、おまけがつくこと◆目的もなく、ご近所をぶらぶら。初めて入ったお店のコーヒーがおいしければ、おまけをもらったような気がしてうれしい。それが気ままな散歩のいいところ。ただし、池内さんの場合は準備に念が入っている◆書棚に「散歩用」と題した手作りのファイルを置いていたそうだ。記事なり本なりで目にし、歩きたくなったえりすぐりのコースが収められている。地図もコピーしておいて、いつでも出かけられるようにした◆そうと聞けば、散歩が随分ぜいたくな遊びに思えてくる。ちなみに「足の名人」を自任した池内さんによれば、足と視力は連動しており、歩く速度を3分の1に落とせば周囲の景色は相当違って見えるのだとか◆目に限るまい。散歩中、どこかの家から漂う夕げの香りに、公園から聞こえる子どもの笑い声に何とも言えぬ懐かしさを覚えることがある。どうやら過去の記憶もゆっくり歩くほど、呼び覚まされるものらしい◆胸の中にある「思い出横町」へ、ふらり寄り道。散歩は楽しい。2022・5・29

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