正平調

時計2022/06/12

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居酒屋で若者が一人、カレイを食べていた。箸使いが達者で、皿の上に残された魚の骨は理科の標本に使えそうなくらい見事である。偶然隣り合わせた詩人の川崎洋さんが思わず声をかけた。「きみ、魚をきれいに食べるね」◆間髪を入れず、若者は答えた。「ええ、猫が月謝払って魚の食べ方を習いに来ます」。食事の作法だけではなく、会話の受け答えも一級だったと川崎さんが書き留めている(「ことばの力」岩波ジュニア新書)◆骨の間にある魚肉を箸で丁寧につまみ出し、口に運ぶ。カレイの若者のように「猫の師匠」を自負できるまでに、どのくらいの鍛錬が必要だろう。芸術の域に達する箸さばきは毎日の食卓で磨かれるに違いない◆日本の1人当たりの魚介類消費量が2020年度は23・4キロで、1960年度以降では最低だったという。コロナ禍で外食消費が減ったほか、価格の高さ、調理に手間がかかることなどが敬遠される理由らしい◆7割の確率でアジの干物が並ぶ-とは川崎さんが語っていた朝の食卓風景である。箸使いも美しかったのだろう。「魚の食べ方が下手な人を嫌ったり軽べつしたりするくせがあります」。そうも打ち明けていた◆今夜あたり魚にしよう。泉下の詩人に怒られぬよう、鍛錬、鍛錬。2022・6・12

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