〈いと暗き/穴に心を吸はれゆくごとく思ひて/つかれて眠る〉(石川啄木)。不安を抱いての眠りは浅くなる。それを、繰り返される群発地震がさらに浅いものにしていることは想像に難くない◆この1年半で150回という異常な揺れが続く石川県の能登地方で日曜日、震度6弱の強い地震が起きた。昨日は震度5強。住民は口々に「何の予兆もなく『ドドド』という音と強い揺れに襲われた」と恐怖を語る◆コロナ禍で、3年ぶりの大きな祭りを控える神社で鳥居が倒壊し、能登のシンボルとされる海上の奇岩「見附島」では崩落が起きた。地元の人たちの落胆はいかばかりか◆暮らしを支えるインフラが災害時には一転して牙をむく。東日本大震災後、強い地震の報に接すれば「原発は大丈夫か」と身構えてしまう。加えて、新幹線の脱線も◆日曜日の地震のマグニチュードは5・4とされ、このクラスの地震は各地で10日に1回ぐらい起きているとか。よく耳にする「国民の暮らしを守る」の矛先としては、隣国より自然災害の脅威の方が急がれるのでは◆啄木の歌をもう一つ。〈こころよき疲れなるかな/息もつかず/仕事をしたる後(のち)のこの疲れ〉。北の空に祈る。能登の被災地に、そんな日常が一日も早く戻りますように。2022・6・21
