正平調

時計2022/06/25

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夭折(ようせつ)の歌人、萩原慎一郎さんに次の作品がある。〈今日という日を懸命に生きてゆく蟻であっても僕であっても〉。短歌界のホープとして期待されていた萩原さんは、中学時代に受けたいじめの後遺症にずっと苦しみ、5年前、32歳で自ら命を絶った◆この人も、アリのように実直に生きていたのではないかと想像する。4年前、青森市で自死した40代の男性のことだ。勤務先の住宅会社のパワハラが原因として先日、遺族が損害賠償を求めて提訴した。会社が渡したという「賞状」を記事で見たが、その残酷さが胸に刺さる◆「貴方(あなた)は、今まで大した成績を残さず、あーあって感じ」「陰で努力し、あまり頑張ってない様に見えてやはり頑張ってない」。部下の尊厳を踏みにじる書面は「症状」と題され、会社の新年会で“授与”された◆心配した妻が「辞めたら?」と声をかけると、男性は「家が完成して、お客さんに鍵を渡す時が一番うれしいから続けたい」と話したという。パワハラという言葉のなんと軽いことか。「心の殺人」と言うほかない◆萩原さんの遺作となった歌集「滑走路」(角川書店)からもう一つ引く。〈破滅するその前にさえ美はあるぞ例えば太陽が沈むその前〉◆太陽はまた昇るが、奪われた命は戻らない。2022・6・25

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