社説

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 政府が9月の臨時国会で提出を目指す組織犯罪処罰法の改正案の内容が判明した。小泉政権下で過去3回にわたって国会に提出され、国民の厳しい批判を受けて廃案となった「共謀罪」の復活である。

 共謀罪は犯罪についての話し合いに加わっただけで処罰され、これまでの国会審議では「市民運動も摘発の対象となる恐れがある」「捜査機関が恣意(しい)的に運用できる」との批判にさらされた。思想・信条の自由を侵害し、監視社会へとつながりかねない。犯罪を未然に防ぐという目的以上に、副作用の大きい「劇薬」の懸念がある。

 今回は通称名を「テロ等組織犯罪準備罪」とし、テロ対策を前面に押し出して国民に広くアピールする狙いのようだ。犯罪の共謀や計画だけでは罪とせず、資金集めなどの準備行為が必要とされる。適用の対象も絞り込み、過去の法案では単に「団体」となっていたが、「組織的犯罪集団」と変更する。

 かつて国会審議で示された批判や懸念に配慮した形だ。とはいえ組織的犯罪集団の定義はあいまいで、認定は捜査機関が判断することに変わりはない。法律の通称名に「テロ等」とあるように今後、摘発の対象が広がることも懸念される。準備行為の具体例の中に「その他」の記述があり、拡大解釈の恐れが残る。

 結局のところ、これまでの共謀罪をめぐる不安は解消されていないと言わざるを得ない。

 2000年、国境を越えた組織犯罪に対処するため国連総会で国際組織犯罪防止条約が採択された。日本は今も締結しておらず、政府は締結には共謀罪の整備が必要と訴える。

 これに対し、日本弁護士連合会などは現行法でも重大犯罪を準備段階で処罰することができ、条約締結に共謀罪は必要ないと主張してきた。テロ犯罪の摘発も可能だとする。

 今年5月には刑事司法改革関連法が成立し、捜査で電話やメールを傍受できる犯罪の対象が大きく広がった。テロ対策を口実に息苦しい監視社会へ進むようなことがあってはならない。

 特定秘密保護法、安全保障法制でもそうだったが、安倍政権は批判の多い政策を選挙戦の間は封印し、終わったとたん強引に進める姿が目に余る。またも数の力で押し切るようでは国民の理解は得られない。

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