社説

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 抗議の声が飛び交う中、委員長が採決を強行する。今国会で繰り返される光景が、きのうの衆院内閣委員会でも見られた。

 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案、通称「カジノ法案」が自民党などの賛成多数で可決された。

 民進党は「審議が不十分」と猛反発して採決に加わらず、共産党は反対した。慎重審議を求め、対応が注目された公明党は自主投票で臨み、賛成と反対に割れた。

 先月30日に審議入りしたばかりである。法案は議員立法の形で、与野党合意で成立させるのがこれまでの慣例だったはずだ。あまりに乱暴なやり方である。

 法案には数々の懸念がある。最も危惧されるのは、これまで刑法で禁じられてきたカジノを合法化することで、ギャンブル依存症の患者が増えるのではないかということだ。

 ギャンブル依存症は、世界保健機関(WHO)が精神疾患の一つに認定している。賭け事にのめり込み、衝動を抑えられなくなる。2年前、厚生労働省の研究班が、成人の4・8%にあたる536万人に疑いがあると発表し、注目を集めた。

 研究班によるとアルコール依存症は109万人で、それをはるかに上回る。国際的にも日本は高水準で、治療や対策も確立していない。

 先日の審議では、法案提出者の自民党議員が「医学的、心理学的アプローチで社会全体で正すことが大事だ」などと答弁しているが、具体策には触れなかった。対策は今後、政府がつくる「実施法案」に丸投げする形で、無責任というしかない。

 ほかにも青少年への悪影響や犯罪組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)など議論すべき点は多い。何より観光立国の起爆剤とすると言いながら、経済効果がどれぐらいか、さっぱり分からない。それでも延長国会で成立させるという。

 委員会では「(カジノによる)経済振興というが、ゆがんだ発想だ。他人の不幸の上に富を築くものだ」との意見も出た。かつて同じようなことを述べた自治体トップがいた。同じ思いの国民も多いだろう。

 審議が全く足りない。自民党は国会軽視の姿勢を改め、国民に届く丁寧な議論を尽くすべきだ。強行採決など考えたことがないと言っていたのは首相ではなかったか。

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