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 「共謀罪」の要件を厳格にした「テロ等準備罪」を新設する法案を巡り、衆院予算委員会の審議が迷走している。

 発端は、金田勝年法相が法務省に指示してまとめさせ、報道機関に公表した文書だ。法案は検討中で与党協議も終わっていない状況だとし、「国会提出後に所管の法務委員会で議論すべきだ」と記した。「質問通告は大まかな項目では不十分」などと質問にも注文を付けた。

 予算委は国の基本方針全般にわたって議論するのが慣例で、質問内容に制限はない。野党が「立法府へのあからさまな介入」と批判するのは当然だ。法相は批判を受けて文書を撤回、謝罪したが、民進党など野党4党は辞任を要求している。

 「共謀罪」法案は、捜査機関の拡大解釈や乱用を懸念した世論の反発で過去3回廃案となった。今回政府は「テロ等準備罪」に名称を変えてイメージ刷新を図り、676に上る対象犯罪も200~300に絞り込んで提出を目指している。

 検討中の法案とはいえ、担当閣僚はその必要性や適用事例などについて説明し、疑問に答える責任がある。検討中だからこそ質疑で明らかになった問題点を分析し、法案に反映させることもできる。人権や表現の自由などを脅かすとして慎重論が根強いだけに、なおのこと重要なプロセスといえる。

 報道機関に文書を配布した真意も測りかねる。予算委では、金田氏が答弁に窮して根拠のない言い逃れをするなどで審議がストップする場面が目立つ。自分の答弁能力の低さを棚に上げ、報道に手心を加えてもらおうとする意図があったのなら言語道断である。

 質問封じ、説明責任の回避、報道への介入と受け止められても仕方ない言動であり、閣僚の資質が疑われる。このままでは国民の権利に関わる共謀罪の審議など任せられない。法相は猛省し、国民の懸念に正面から向き合うべきだ。

 安倍政権は、特定秘密保護法や安保法制、「カジノ」法などの審議でも、問題点が十分解決しないまま数の力で成立に持ち込んできた。与党が決めれば、どんな法案も押し通せる。そんな慢心が国会軽視の言動を生んでいるのではないか。政府、与党は国民の不安に応え、法案提出前の議論にも誠実に応じるべきだ。

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