社説

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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏がマレーシアの国際空港で殺害された事件は、北朝鮮の情報機関が主導した暗殺の疑いが強くなってきた。

 暗殺が事実であれば、個人を標的にした悪質なテロ行為だ。現地警察は実行犯の女2人のほかに北朝鮮国籍の男1人を逮捕した。直後に出国した北朝鮮籍の男4人も国際手配して行方を追っている。

 マレーシア当局が容疑者の追及に全力を挙げるのは当然だ。不可解なのは北朝鮮の対応である。

 犯行には猛毒の神経剤VXなどが使われた可能性がある。警察は死因特定のため司法解剖を行ったが、北朝鮮の大使が病院に乗り込んで抗議し、遺体の引き渡しを求めた。あからさまな干渉で、外交官として常軌を逸した行動だ。

 マレーシア政府は駐北朝鮮大使を召還する措置に踏み切った。北朝鮮は事件への関与を認めず、一方で捜査を批判するなど筋の通らない振る舞いを続けている。これでは今以上に孤立を深めるだけだろう。

 正男氏は故金正日(ジョンイル)総書記の長男で、後継者と目された時期もある。弟の正恩氏が実権を握ってからは距離を置き、近年は海外での生活を続けていたが、北朝鮮当局から暗殺の対象とされていたようだ。

 正男氏の家族は中国の北京とマカオに住んでおり、正男氏の身辺も中国当局が警護していたとされる。そうであれば、事件は中国との関係にも影を落とす可能性がある。

 実際、中国は事件後、北朝鮮からの石炭輸入を停止する方針を明らかにした。弾道ミサイル発射に対する国連主導の制裁措置の一環だが、殺害が影響したとの見方がある。

 北朝鮮は過去、外国でのテロ事件を何度も引き起こしている。韓国の閣僚らが死亡した「ラングーン爆弾テロ」や、115人が犠牲になった「大韓航空機爆発事件」などだが、今も関与を否定している。

 日本人の拉致事件についても、金総書記がいったん事実を認めて謝罪したが、その後態度を変え、約束した再調査に応じていない。

 今回の事件で国際社会の包囲網が強まるのは確実だ。反発した北朝鮮がさらなる核・ミサイル実験などに走る恐れもある。出方が読めないだけに、各国が連携して警戒と監視を強化しなければならない。

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