社説

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 天皇、皇后両陛下がきょうからベトナムとタイを訪問される。

 平和への願いを込めて慰霊の旅を続けてこられた両陛下だが、今回の旅では、戦争の歴史が今もなお人々の上に落とす影について深い思いを抱かれているのではないか。

 初めて訪れるベトナムには、先の大戦後も現地に残った元日本兵の妻や子どもらが暮らしている。その人たちと言葉を交わし、歴史に翻弄(ほんろう)された苦難をねぎらわれる。

 旧フランス領インドシナに進駐した元日本兵の多くは戦後、ベトナム独立同盟(ベトミン)に身を投じ、フランスからの独立戦争を共に戦った。その数は約600人に上り、半数が戦死、病死したとされる。

 戦火が収まった後に元兵士らは帰国した。しかし、当時は家族を連れての帰国は認められず、妻子と生き別れる結果になった。

 現地では「封印された歴史」とされ、日本でもあまり知られていないが、今回の訪問で光が当たることになる。傷ついた人々に寄り添おうとする両陛下の気持ちを、私たちも共有したい。

 満83歳の天皇陛下は来年で在位30年となる。昨年8月にビデオメッセージで退位の思いを示され、高齢と公務の負担を踏まえてこの節目を区切りと考えているようだ。

 政府は有識者会議を設けて退位の法整備を議論し、衆参両院の正副議長も各党派から意見を聴取して取りまとめを目指す。5年前に狭心症の手術を受けた陛下の体調を考えると、負担軽減は急務といえる。

 一方、ご自身はできるだけ慰霊の旅を実現したいとの思いがあるのだろう。ビデオメッセージを公表した昨年は1月にフィリピンを訪れ、無名戦士の墓と日本人戦没者の慰霊碑に花を手向けた。

 戦争の記憶を伝えていくことの大切さを繰り返し訴え、毎年のようにかつての戦地に足を運ばれる。その姿には、国籍などを超えて、亡くなり、苦しんだ全ての人々を慰めたいとの心情が強くうかがえる。

 私たちにも、今回のベトナム訪問は戦後にまで及んだアジアと日本の複雑な歴史を学ぶ機会となる。

 タイでは昨年亡くなったプミポン前国王を弔問し、ワチラロンコン新国王と会見する。タイ王室と皇室との関係は深い。両国の友好を、より強固な平和の礎としたい。

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