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 厚生労働省が2018年度からの保育所運営指針改定案で、3歳以上の幼児を対象に国旗と国歌に「親しむ」と初めて明記した。文部科学省が公表した幼稚園の教育要領見直し案にも同様の趣旨が盛り込まれた。

 小中高校では、学習指導要領に国旗掲揚や国歌斉唱を指導する規定がある。子どもたちが自国の文化について学ぶことは大切だ。ただ、かつて軍国主義の象徴とされた国旗や国歌の扱いは、教育現場でも意見が分かれている。

 政府は「国旗掲揚や国歌斉唱を強制するものではない」とするが、保育指針は法的拘束力を持つ。明記する理由を丁寧に説明しなければ、現場の混乱を招きかねない。

 保育所の新指針案では、3歳以上が対象の項目に「保育所内外の行事において国旗に親しむ」「伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべうたやわが国の伝統的な遊びに親しむ」と盛り込まれた。幼稚園の教育要領には既に「国旗に親しむ」とあり、今回の見直し案で国歌にも触れた。

 保育所は幼児を預かる福祉施設だが、政府は幼稚園と保育所の一体化を進めており、教育要領と整合性のある幼児教育を進めるという。「認定こども園」の運営指針の改定案にも同様に明記された。

 1999年の国旗国歌法成立時に政府は「強制や義務化するものではない」との見解を示した。だが実際は学校での掲揚と斉唱を求め、従わない教員が懲戒処分を受けている。教員が「憲法が定める思想・良心の自由を侵害している」として処分取り消しを求める訴訟も相次ぐなど、対立が繰り返されている。

 一昨年、当時の文科相が学習指導要領の拘束力が及ばない国公立大にも国旗や国歌への「適切な対応」を要請し、安倍晋三首相も「教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきでは」と語った。運営費交付金の削減傾向が続く国公立大への圧力とも受け取られかねず、大学の自治への介入との批判を招いた。

 今回の見直しが現場での強制につながれば、幼児教育や保育の環境に影響を及ぼす懸念がある。折しも国会では大阪市の学校法人「森友学園」が運営する幼稚園を巡り、教育の政治的中立性の問題が議論されている。政府はパブリックコメント(意見公募)などで幅広い意見に耳を傾け、慎重に検討すべきだ。

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