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 神戸で開かれていた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベル交渉会合が終了した。日本や中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国など16カ国が、自由貿易をさらに発展させるためのルールを協議したが、新たな合意は得られず、議論は次回5月の会合に持ち越された。

 日本は米国が主導する環太平洋連携協定(TPP)を通商政策の要に据えてきた。しかし、肝心の米トランプ大統領がTPP離脱を決め、2国間の貿易協議を優先する構えだ。日本も通商政策を見直し、多様な連携の在り方を探る必要がある。

 英国が欧州連合(EU)離脱を決め、トランプ米大統領は世界貿易機関(WTO)のルールに従わない方針を示すなど、自由貿易への懐疑的な姿勢が広がっている。RCEPが頓挫すればそうした傾向をいっそう強め、保護主義の台頭を許すことが懸念される。日本は交渉に積極的に関わる必要がある。

 2013年に始まったRCEPの交渉は、今回で17回目となる。物品やサービスなど15分野を対象とし、実現すれば世界人口の半分を占める巨大経済圏が生まれる。

 だが現在までに合意できたのは、2分野にすぎない。自由貿易を掲げてはいるが、国営企業の比率が高い中国や、国内産業の基盤が弱いインドは緩やかな自由化を求める。一方で、日本やASEAN加盟国は高レベルの自由化を掲げており、交渉妥結は容易ではない。

 ただ、今年で発足50周年を迎えるASEANの加盟国には、早期妥結を求める声がある。多国間協定の重要性を、米トランプ政権に認識させることにもつながるだろう。

 しかし、交渉を急ぐのは得策ではない。中国を筆頭に、アジアでは高成長を遂げていても果実が国民生活に行き届かず、インフラへの投資も不十分な国家が多い。国家間の不平等を拡大するような形で自由化が進めば、社会の不安定や域内の混迷を招くことになりかねない。各国の事情にも配慮しながらアジア全体にプラスとなるよう、丁寧な議論を積み重ねるべきだ。

 それぞれの国が安定を保ち、消費意欲が旺盛な中間層を増やしてこそ、世界経済の発展につながる。参加国はそのことを交渉の大前提として認識してもらいたい。

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