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 ロシアから拳銃を持ち込み、銃刀法違反(所持)の罪で実刑を受けたロシア人の元船員が「北海道警の違法なおとり捜査で罪をでっちあげられた」と訴えた再審で、札幌地裁が無罪判決を言い渡した。

 おとり捜査は違法薬物や銃器の密売の摘発で用いられる。今回の捜査について違法性を認めるのか、司法判断が注目されたが、判決は何も言及しなかった。

 弁護側は「史上まれにみる違法捜査でつくられた事件」と主張した。そして北海道警の捜査員が違法捜査について証言したことが、再審開始の決定につながった。捜査員が法廷で偽証していた事実も明らかになっている。

 元船員の無罪判決で済まされる問題ではないだろう。地裁は捜査や起訴が適正だったかをしっかり審理し、判断を示すべきだった。

 元船員は1997年、銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕された。弁護側は違法なおとり捜査を主張したが、証人として出廷した捜査員は否定、元船員は実刑が確定し服役した。

 ところが2002年になって、捜査員の元警部が覚せい剤取締法違反で逮捕され、公判で元船員の事件でのおとり捜査と偽証を認めた。

 元警部が逮捕されなければ明るみに出なかったに違いない。報道機関の取材に対し「摘発の実績をつくるための違法捜査だった。他にも汚いことをやった」とも語っている。言葉通りなら、元船員は道警の組織ぐるみの違法捜査で犯すつもりのなかった罪を犯し、服役したことになる。他にも道警の違法捜査があった可能性は否定しきれない。

 おとり捜査については、04年の最高裁判決で三つの条件が示されている。直接の被害者がいない薬物犯罪などの捜査▽通常の捜査では摘発が困難▽機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者が対象-である。

 しかし、「犯罪を行う意思」などは曖昧で、違法性を判断する明確な基準とまでは言えない。おとり捜査の違法性を判断する材料はあまりに少なく、今回のような裁判を通して問題点を浮かび上がらせる必要がある。司法にはその役割を果たす重い責任があるはずだ。

 北海道警は自らの捜査を検証し、公表すべきだ。このままで終わらせてはならない。

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