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 福島第1原発事故で、避難指示区域外から自主避難した人たちを対象にした国と福島県による公営住宅の無償提供が、3月末で打ち切られる。全国では約1万世帯、兵庫でも、神戸を含む6市などに避難した約30世帯90人が対象になる。

 現在の住まいから退去する人や家賃が発生する人がいる。避難生活の長期化による精神的、経済的な負担に追い打ちをかけることになる。

 兵庫県内では独自の制度で実質的に無償提供を続ける自治体もあるが、ごく一部だ。全国的には無償提供の延長や、引っ越し費用の補助や就職支援などの支援に取り組む自治体もある。目の前にいる避難者への柔軟な対応を望みたい。

 自治体の対応が分かれる背景には、除染が進み放射線量が低減したとして、「帰還政策」を進める国の姿勢がある。福島県も家賃補助など県内へ戻る住民への支援策を打ち出す。だが一方的な方針には、古里へ戻れない避難者の実情に目を向けていないとの批判がある。

 福島県から避難する小貫ちかこさんは、6歳の娘と神戸市内の市営住宅で暮らす。家族で話し合い、福島に残る夫との二重生活を4月以降も続ける決断をした。自宅周辺は除染作業が遅れ、低線量被ばくの影響も科学的に明らかになっていない。「子どもに影響が出るかもしれない状況では、帰りたくても帰れない。悩みは何も変わらないまま時間だけが過ぎていく」と話す。

 2012年に議員立法で成立した「子ども・被災者支援法」は、避難しても支援が受けられる権利を認めたが、具体的な支援策は乏しい。「新たに避難する状況にはない」とした国の方針改定も「必要のない避難をしている」との誤解を生んだ。

 避難者の調査などに取り組む神戸親和女子大の戸田典樹教授(60)は「帰還後も避難をしたことを隠しながら生活する人は多い。住民同士の『分断』で、精神的な負担を強いられている」と指摘する。

 自主避難した子どもたちへのいじめも相次ぐ。大人の無理解な言動が、子どもにまで及ぶ現状は深刻だ。

 親の介護や経済的な事情で帰還せざるを得ない人もいるが、避難者は国の原発政策が招いた被害者と捉えるべきである。国には生活再建に向け、個別の事情に応じた支援に継続的に取り組む責任がある。

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