社説

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 東日本大震災の発生直後、国民の間には原子力発電所に依存しない社会を目指すとの意識が広がった。6年が過ぎようとする今、政府は原発を「ベースロード電源」と位置づけ、再稼働を進めている。

 だが、原発を動かせば必ず発生する使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物は、最終処分のめどが立たない。再稼働を進めればその量は増え、解決への道のりはますます遠くなる。政府は先送りせず、責任を持って解決策を示さねばならない。

 原子力規制委員会は、6原発12基が新たな規制基準を満たしたと判断した。5基が再稼働したが、大津地裁の運転差し止めの仮処分決定で、2基は運転できなくなった。

 全国では約1・8万トンの使用済み核燃料が原発敷地内の燃料プールなどに保管されている。関西電力が再稼働を目指している高浜原発をはじめ、動かし続ければ数年でプールが満杯になる原発は多い。

 政府は地下300メートルより深い地層に廃棄物を埋設する最終処理策を打ち出し、2000年に法制化した。しかし候補地は白紙のままだ。仮に政府が候補地を示しても、地元の同意を得るのは容易ではないだろう。

 廃棄物の無害化までには10万年を要する。日本列島が地震の活動期に入り、未知の活断層が大きな地震を引き起こす中、これほど長期に地中の安定が保たれるかは現代の科学技術では見通せない。

 被災地には除染で発生した汚染土壌など大量の放射性廃棄物が山積みとなっている。政府は今秋、東京電力福島第1発電所の周囲で、最大2200万立方メートル分を保管する中間貯蔵施設の運用を始める。30年以内に福島県外で最終処分する方針だが、住民の間には、処分地が見つからず施設が恒久化するとの懸念がある。

 放射性廃棄物の処分の検討は50年以上も前から始まっていたが、答えが出ていないのに国策で原発の新増設を推し進めた。災禍に直面しても軸足を変えようとしない政府に、国民が疑問を抱くのは当然だ。

 原発が立地する新潟や鹿児島県では、再稼働反対や脱原発を掲げた知事が当選した。原発再稼働に否定的な民意が根強いことを、政府は謙虚に受け止めるべきである。

 廃棄物処理の具体的な道筋を描かないまま、次世代へ難問を押しつけることは許されない。

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