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 安倍晋三首相が、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)から撤収する方針を発表した。現地には陸上自衛隊の施設部隊約350人が派遣されているが、5月末をめどに任務を終えて帰国させるという。

 南スーダンでは政府軍と反政府勢力の対立が続き、昨年7月には大規模な衝突が発生して270人以上が死亡した。当時の派遣部隊の日報には「戦闘」に巻き込まれる事態を憂慮した記述があり、緊張の高まりが浮き彫りになった。

 自衛隊は憲法9条の制約で海外での武力行使が許されない。PKO参加は「紛争当事者間の停戦合意の成立」などの5原則が前提となる。国連当局者も内戦拡大を危惧し、活動は危険と背中合わせの状況だった。

 治安情勢の悪化が今回の撤収の理由であれば理解できる。ところが首相は、派遣期間が5年を過ぎ、施設整備に「一定の区切り」を付けられるためとする。これまでそうした説明をしたことはなく、唐突な発表には首をかしげるしかない。

 確かに、南スーダンの施設部隊派遣は「過去最長で、最大規模」となった。延べ4千人近い隊員が約210キロの道路を補修し、大学などの用地を約50万平方メートル造成した。過酷な環境の中で地域の再建に汗を流した隊員の労をねぎらいたい。

 一方で政府は昨年11月、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務付与を閣議決定し、12月から運用を始めた。春先に付与する予定が不測の事態の発生を恐れて参院選後に先延ばししたとの見方がある。

 現地での「戦闘」を伝える日報が発覚したのはその後だ。しかし稲田朋美防衛相らは緊迫した状況を「戦闘行為」に当たらない「武力衝突」と言い換え、自衛隊が直面するリスクを認めようとはしなかった。

 ただ、首相は自衛隊員に犠牲が出た場合は辞任の覚悟を持たなければいけないとも述べている。政府内にも撤収について「治安情勢も含めた総合的な判断」とする声がある。「森友学園」の問題が長引く中で政治的なリスクの回避を重視したのだとすれば、批判は免れないだろう。

 政府はPKOに代わって南スーダンに7億円規模の支援を検討している。そうした方針変更に最も戸惑っているのは現場の隊員ではないか。日本にふさわしい平和貢献の在り方を真剣に議論すべきである。

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