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 日本の科学者を代表する組織「日本学術会議」が、半世紀ぶりに軍事研究に関する声明案を発表した。

 軍事にも応用できる研究に資金を出す防衛省の公募制度について「政府の介入が著しく、問題が多い」と指摘し、過去の戦争協力の歴史を踏まえ「軍事研究をしない」と誓った1950年と67年の声明は「継承する」とした。

 4月の総会に諮られるが、長年貫いてきた姿勢を守る意思表示として評価したい。

 インターネットや衛星利用測位システム(GPS)など、軍事研究が民生用に転じた例は少なくない。線引きは難しく、学術会議でも意見は分かれた。声明には強制力がなく、大学や研究者の判断に委ねられるため、実効性を疑問視する声もある。

 しかし過去の声明に込められているのは、悲惨な戦争への協力に加え、研究の自主性や公開性を奪われたことへの反省だ。大学や研究者は原点を再認識する必要がある。

 議論のきっかけになった防衛省の公募制度は、民間技術を効率的に装備開発に取り込むのを狙いとする。1件あたりの支給額は最大年3千万円で、予算は16年度の6億円から17年度は110億円に増額する予定だ。さらに、米軍が日本の大学などに10年間で9億円近い研究資金を投じていることも明らかになった。

 新声明案は公募制度への応募の可否について明確な表現は避けたが、各大学に慎重な判断を求めた。「自衛目的にかなうなら問題ない」「基礎研究であれば軍事研究にあたらない」との意見もあるが、意図せずに軍事研究に巻き込まれ、学問の自由が脅かされる恐れがあることは、意識しておくべきだろう。

 大学側が軍事につながる研究に応じる背景には、資金不足がある。国立大に支給する研究費を含む国の運営費交付金は10年間で1千億円以上減少した。科学技術の健全な発展には自由な研究環境が不可欠だ。防衛省主導の資金ではなく民生分野の研究費を手厚くしなければならない。

 新声明案は、軍事に関与する可能性がある研究について倫理面の妥当性などを審査する機関を設けるよう求めた。現状では、公募制度への対処方針や内規を設ける大学は一部にとどまる。軍事利用になし崩し的に取り込まれる流れには歯止めをかけねばならない。

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