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 憲法施行70年の節目に、安倍晋三首相が憲法改正について踏み込んだ発言を行った。

 3日の「憲法記念日」に開かれた改憲派の会合にビデオメッセージを寄せ、戦争の放棄や戦力の不保持などを定めた9条に「自衛隊の存在」を書き込む考えを明言した。併せて東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に「新しい憲法」を施行する方針も打ち出した。

 自衛隊を9条に付記する首相の提案は初めてで、自民党内にも波紋が広がる。どんな形であれ、9条改正が「悲願」であることを自ら表明したといえる。

 しかし、首相には憲法を順守する義務がある。改憲を公言すること自体、憲法に抵触すると批判されても仕方がない。自民党総裁としての立場の使い分けは詭弁(きべん)としか聞こえない。

 来年9月の自民党総裁選で3選されれば、総裁任期は21年9月まで延長される。任期中の改憲を実現したいとの強い思いがあるのだろう。首相自身、きのうの国会で「政党間の議論を活性化するため」と述べた。

 現在、衆参両院の憲法審査会で議論が続いているが、9条は検討項目に上がっていない。審議をあおるような発言は「国会軽視」との批判を免れない。

 衆参両院では「改憲派」が3分の2を超えている。だが、公明党は新たな条文を付け加える「加憲」の立場で、日本維新の会は教育無償化を打ち出すなど各党の足並みはそろわない。

 発言は公明に配慮し、維新が掲げる教育無償化にも賛意を示すなど、連携強化の狙いがうかがえる。一方、9条の理念を尊重する姿勢を示すことで野党の批判を回避する狙いも透ける。

 ただ、世論調査では7割超が9条の存在を評価し、9条改正の賛否は割れている。首相が前のめりになるほど、慎重な民意との距離は開いていく。

 この時期、政府は北朝鮮によるミサイル攻撃への対処能力向上を理由に、敵基地を攻撃する巡航ミサイル導入の検討を始めた。相手に「先制攻撃」と受け取られ、専守防衛を逸脱する恐れが指摘されている。

 多くの人が安倍政権下の改憲に否定的なのは、平和主義を揺るがしかねない政府、与党の動きを懸念するからだろう。

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