社説

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 国民軽視も甚だしいと言うほかない。安倍晋三首相が提起した憲法改正案をめぐる自身の国会答弁である。

 首相は改憲派の会合にビデオでメッセージを寄せ、憲法9条に「自衛隊の存在」を書き加え、「新しい憲法」を東京五輪・パラリンピックの2020年に施行することを目指す方針を明らかにした。

 重大な発言だけに当然、野党は国会で真意を問いただす。だが首相は「メッセージは党総裁として話した」「この場には首相として立っている」として質問にまともに答えなかった。

 それだけでなく「総裁としての考え方は読売新聞に書いてある」と突っぱねた。あまりの答弁に、委員長が「不適切なので気を付けていただきたい」とたしなめる始末だった。

 「首相」と「総裁」を都合のいいように使い分け、国会をないがしろにしていると言わざるを得ない。

 発言には、憲法審査会での議論を加速させる意図があるとみられるが、与野党が積み上げてきた経緯を無視したものだ。次回の審査会は野党側の反発で開催が見送られた。

 首相はこれまでも高い支持率を背景に、真摯(しんし)とはいえない言動を繰り返してきた。

 安全保障法制の議論では丁寧に説明するどころか、「早く質問しろよ」と野党議員にやじを飛ばしたり、閣僚答弁の間違いにも「まあいいじゃないか」と言い放ったりした。

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の審議は、疑問や不安がぬぐいきれない中、来週にも与党が強行採決する構えを見せている。「1強体制」のおごりが目に余る。

 自民党の改憲草案と違う首相の発言にも、党内の異論は大きくならない。船田元・憲法改正推進本部長代行はメールマガジンで、憲法審査会の議論の軽視につながりかねないと不快感を示したが、少数派だ。

 異論に向き合わず、疑問に正面から答えない姿勢で、憲法論議を進めることは許されない。国会の軽視は、その向こうにいる国民を軽視するものだ。安倍首相は、誠実に説明責任を果たさねばならない。

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