社説

  • 印刷

 テロ対策として「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法の改正案が衆議院を通過した。世論調査の数字が法案への国民の思いを示している。「政府の説明は十分と思わない」との回答が77・2%に上った。

 今もって「よく分からない」というのが率直な受け止めだろう。国民の理解が得られないまま政府、与党の政治日程で法案を成立させてはならない。

 欧州で一般市民を標的にした事件が相次ぐ。テロと戦うのは政府と警察当局だけではない。国民の理解と協力がなければ実効性を欠くだろう。

 テロ対策と社会の在り方について、判断するのは私たち一人一人のはずだ。ところが、衆院法務委員会での政府の説明はあまりに中身が乏しく、深く考える材料にはならなかった。

 「一般人は捜査対象となるのか」という争点一つとっても、説明が二転三転した。「告発があっても一般人なら捜査しない」という理解しづらい法相の答弁もあった。

 テロ行為を認定するのは捜査当局だ。日常の買い物や預金の引き落としも、当局がテロの準備行為と判断すれば取り調べの対象となり得る。計画段階とみなされれば日々の行動や人との接触が監視される。

 もとより「共謀罪」は憲法が保障する「内心の自由」を脅かす恐れがある。今の政府がいくら否定しても、後の法解釈や運用などで適用拡大は可能だ。

 戦前の治安維持法がそうだった。成立時の政府は、普通の市民は対象にならず、裁判所が乱用を防ぐと国民に訴えた。教訓とすべき歴史の事実である。

 捜査への歯止めをどう担保するのか。曖昧な議論のままでは、乱用の懸念が募るばかりだ。

 世界からも厳しい視線が注がれる。人権の状況を調査・監視する国連の特別報告者は「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」とする書簡を、日本政府に送った。

 安倍晋三首相は法案を通さねば東京五輪・パラリンピックを開催できないと主張する。しかし問われているのは五輪だけでなく、私たちの社会の未来だ。

 参議院では国民の疑念に答える審議が求められる。政府は明確な説明に努めるべきである。

社説の最新
もっと見る

天気(9月24日)

  • 27℃
  • ---℃
  • 10%

  • 28℃
  • ---℃
  • 10%

  • 30℃
  • ---℃
  • 0%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

お知らせ