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 自衛隊の制服組トップである河野克俊統合幕僚長が、憲法改正に関する踏み込んだ発言をした。9条に自衛隊の存在を明記する安倍晋三首相の提起について問われ、「非常にありがたいと思う」と述べた。

 日本外国特派員協会で行われた記者会見での発言で、質問に対して答えた。「一自衛官として申し上げるなら」とことわった上での見解の表明だが、これは言い訳にはならない。

 自衛隊法は隊員の政治的な行為を制限しており、その規定に抵触する疑いがある。何より、公務員には憲法を尊重し擁護する義務がある。

 河野氏は最高幹部の制服姿で会見に出席した。たとえ「一自衛官」としての発言であっても公務員に変わりはなく、公の場で改憲を期待するような言動は許されない。

 それでなくても、統合幕僚長は陸海空の自衛隊の運用を統括するポストで、大きな権限と影響力を持つ。文民統制の面からも政治的な行為には自制が求められるはずである。

 今回、河野氏は「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになればありがたいと思う」と述べた。その直前に「憲法は高度な政治問題なので、統幕長の立場で申し上げるのは適当ではない」とも話している。

 事の重大さを知りながらあえて発言したのであれば、進退を問われかねない問題だ。

 菅義偉官房長官は「個人の見解という形で述べた。全く問題ない」と弁護するが、的外れというしかない。発言を慎むよう厳しく注意すべきだろう。

 そもそも、憲法9条に自衛隊を明記する新たな条項を加えるという首相の提起自体、憲法擁護義務に反すると指摘されている。自民党総裁としての発言だと釈明するが、立場の使い分けは詭弁(きべん)としか聞こえない。

 安倍政権は2年前にも、衆参いずれかの議員の4分の1が要求すれば臨時国会を召集すべきと定める憲法53条に従わず、召集を見送ったことがある。憲法軽視の空気が政府内に広がっているとすれば、同じような言動が繰り返される恐れがある。

 「憲法は権力を縛るもの」という立憲主義の原理を首相以下、改めて肝に銘じるべきだ。

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