社説

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 「共謀罪」法が施行された。 与党がテロ対策を掲げて先月、採決を強行した改正組織犯罪処罰法である。277に及ぶ犯罪について、「準備行為」をした段階で処罰が可能になった。

 準備段階で取り締まるには対象者の監視が欠かせない。テロを防ぐためと言いながら、捜査の手が一般市民に及ぶことはないのか。権力の乱用が心の内を脅かし、プライバシーを侵害する監視社会にならないか。

 そんな国民の不安に対し、政府、与党は説明を尽くすことなく、「市民が捜査対象になることはない」と言い張って国会審議を押し切った。委員会審議を一方的に打ち切り、本会議採決に持ち込む「中間報告」という禁じ手まで使った。

 記憶に新しい政府、与党の乱暴な姿勢に、不安は膨らむばかりだ。政府と捜査当局の動きに市民が厳しい視線を注ぐ必要がある。

 懸念されるのは、反原発や反基地などの運動で政府に批判の声を上げる団体が、捜査の対象になることだ。人権侵害や言論封じ込めの動きがないか監視を強めねばならない。

 法の適用には「組織的犯罪集団」のメンバーらが2人以上で犯罪を計画し、実行するための準備行為が要件となる。

 いずれも基準があいまいで分かりにくい。国会審議でも焦点となったが、法務大臣や法務省幹部の答弁が二転三転し、議論が深まることはなかった。

 法の施行に向け、警察庁は現場で判断せず捜査を始める前に報告するよう通達し、可否を慎重に判断する方針を示した。

 それでも、当局の裁量が大きいことに変わりはない。裁判所の令状がなくとも任意捜査は可能だ。当局が恣意(しい)的な運用で市民を対象にすれば、社会は確実に萎縮するだろう。

 法務大臣は「新たな捜査手法は導入しない」とする。だが共謀罪を通信傍受法の対象とするよう求める声がある。

 捜査の暴走をチェックする仕組みを欠いた法の不備も、内外から指摘されている。

 自由に物が言える社会を守るため、これからも声を上げ続けたい。あまりに問題点が多い法律であり、廃止も含めて一から考え直すべきだ。

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