社説

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 白血病患者らへの移植用臍帯血(さいたいけつ)を凍結保存し、全国の医療機関に供給する認定NPO法人「兵庫さい帯血バンク」(西宮市)が、入居先の兵庫医科大学から来年8月末までの退去を求められている。病棟の建て替え計画に伴うものだが、多額の移転費用や賃料の負担増が見込まれ、移設先の見通しが立っていない。存続を目指し、移転費用の募金活動も始めた。

 国が許可する六つの公的臍帯血バンクの一つで、全国の草分け的存在である。昨年度は、全国で約1300人に移植された臍帯血のうち約1割を扱った。井戸敏三・兵庫県知事は定例会見で「継続の道がないか、県としてどんな応援の手段があるか検討したい」と述べた。

 困難な状況を打破するため、官民挙げて支援したい。

 バンクは設備など移転費用を約2億7千万円と試算する。後藤武理事長は「何らかの資金援助がなければバンクの移転、存続は厳しい。行政や民間を問わず各方面に協力を仰ぎ、兵庫のバンクの役割を果たしたい」と訴える。事業の性格上、内部留保が乏しく、資金的に苦しいのは理解できる。

 一番大切にしたいのが、バンクを支える仕組みである。1995年11月、血液内科医や市民ボランティアを中心に「近畿臍帯血バンク」の一組織として全国で2番目に発足した。独立してからも医療機関への協力依頼や搬送などを、市民ボランティアらが担ってきた。

 理解を示す医療機関は増えつつある。人々の熱意や善意が築いてきた医療は、命を支える社会の財産だ。将来にわたって維持すべきだろう。

 赤ちゃんのへその緒や胎盤に含まれる臍帯血の移植は「幸せのおすそ分け」と表現される。骨髄移植に比べて提供者の負担が少なく、拒絶反応も起きにくいため、移植数は年々増えている。2015年度には初めて骨髄移植の件数を上回った。

 後藤理事長は「来年1月中には(NPO法人としての)事業継続か廃止かの決定をしたい」と語った。解決すべき課題は多いが、兵庫の地に根付いた「おすそ分け」の文化を守るため、協力の輪が大きく広がることを期待する。

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