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 憲法施行70年の今年は、改憲を目指す政治の動きに弾みがついた年となった。

 一石を投じたのは、5月3日の憲法記念日に公表された安倍晋三首相のビデオメッセージである。戦争放棄や戦力不保持を定めた9条に「自衛隊の存在」を追記する案を提示した。

 党内に諮らず、唐突に打ち出された首相の「意向」は波紋を広げた。一方で、戦後の復興や繁栄に憲法が果たした役割に関する議論が深まらなかったのは残念というしかない。

 首相は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に「新しい憲法」を施行したい考えも強調した。19年夏の参議院選までに改憲の国会発議を目指しているとされる。

 しかし、最近の世論調査でも安倍政権下の改憲に5割近くが反対している。国民の不安や懸念と向き合い、「改正ありき」の進め方は慎むべきだ。

 この夏、「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画や「森友学園」への国有地売却を巡る疑惑で内閣支持率が急落した。首相は「反省」を口にし、頭を下げた。その際、改憲についても「スケジュールありきではない」と前のめりの姿勢を軌道修正した。

 だが、支持率下落に歯止めがかかると議論加速の構えを打ち出した。さらに衆院解散に踏み切って総選挙で勝利を収め、党内の議論を急ぐよう指示するなど、いっそう強気に転じた。

 自民、公明両党に希望の党や日本維新の会を含めれば「改憲勢力」が発議に必要な3分の2以上の議席を超えている。改憲を「宿願」とする首相にはうってつけの状況といえる。

 ただ、9条に自衛隊を明記する首相案には自民党内にも異論が根強くある。戦力不保持と交戦権否定を定めた2項を削除して「国防軍」を創設する党改憲草案と矛盾するためだ。

 自民党は首相案への一本化の動きを年明けに再開する。他党とも協議を進める方針だが、教育無償化を明記するかなど、政党間の主張は一致していない。立憲民主党は、自民党などの案にない首相の解散権制約などを検討課題に挙げている。

 違いを超えて合意形成を図るには時間が要る。結論を急がず熟議を最優先すべきだ。

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