社説

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 京都大学iPS細胞研究所に所属する30代の特定拠点助教の論文で捏造(ねつぞう)と改ざんが見つかった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って脳の構造体を作ることに成功したとする内容で、内部の指摘で調べた結果、主要図などに不正があった。

 京大は論文を掲載した米科学誌に取り下げを求めた。今後関係者を処分する方針だ。他の研究には影響はないとしている。

 iPS細胞研究所は再生医療分野で世界的に注目を集める。一流の研究者をそろえ、所長はノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥京大教授が務める。

 不正は国民から寄せられた期待と信頼を裏切ることになる。研究所は自らの手で問題点と背景を明らかにすべきだ。

 大学の調査に対し、助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と不正を認めているという。論文はアルツハイマー病の治療にも将来役立つ可能性があるとしている。病の治療につながる発見を、首を長くして待っている患者のことは思い浮かばなかったのだろうか。

 生命科学分野では、STAP細胞問題や東京大分子細胞生物学研究所でのデータ捏造など、不正が後を絶たない。研究者の倫理を巡る意識改革が必要だ。

 今回の研究には一部に国費が使われており、一般の人から募った寄付金も活用されていた。「非常に強い後悔、反省をしている」と頭を下げた山中所長の責任も問われる事態だ。

 論文のチェック体制に不備があったことは明らかだ。研究所では、不正を防ぐために実験ノートの提出などさまざまな対策を講じてきたというが、形骸化していたことは否めない。

 論文は複数の研究者の共著となっているが、助教による実験データの解析や執筆の過程で不正をなぜ見抜けなかったのか。論文作成に至る経緯を検証し、再発防止に全力を挙げなければならない。

 研究所教職員の9割は非正規雇用で不安定な身分とされる。2014年11月に着任した助教も今年3月までの任期だった。

 山中所長自身、研究者の長期雇用などを可能にする資金的援助を呼び掛けている。国は研究にじっくりと向き合える環境の整備を急ぐべきだ。

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