社説

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 安倍晋三首相がこのところ、憲法改正について踏み込んだ発言をしている。宿願の改憲実現に向けて、議論に弾みをつける狙いがあるのだろう。

 ただ、首をかしげるような言葉が耳につく。例えば先日の参院予算委員会では、改憲議論を国会の「義務」と表現した。

 大臣や国会議員に改憲を論じる義務はない。憲法が求めているのは、憲法を尊重し擁護する義務だ。首相発言は肝心の部分がまったく逆になっている。

 意図した発言なら、独自の憲法解釈を披露したことになる。言葉が不適切だったというのなら、行政府の長が国会に議論を促すこと自体、出過ぎた行為といわれても仕方がない。

 首相は自民党総裁でもあり、二つの立場を使い分けてきた。今回は首相としての国会答弁でそうした釈明は通用しない。

 もともと首相の憲法観を疑問視する声は根強い。その一つが、憲法は国民の権利と自由を守り権力を縛るものとする「立憲主義」への向き合い方だ。

 首相は5年前の国会審議で、「かつては(憲法は)そういう存在だった」と述べた。国民が王権を制限した西洋の歴史を引き合いに出し、日本の現状とは一線を引いてみせた。

 今国会の施政方針演説では「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法」と語り、国家の統治を重視する考えを示した。

 これらは自民党の憲法改正草案にも通じるものがある。個人の尊厳や権利よりも国家や秩序を重んじる考え方がにじむ。

 首相が語る憲法のありようは、基本的人権や法の支配など自身が掲げる「基本的価値」と矛盾しないか気にかかる。若い世代が大学などで学ぶ憲法学とも相いれないのではないか。

 首相は今年を改憲の正念場と捉えているとされる。早ければ秋の臨時国会で改憲の発議にこぎ着けるもくろみという。

 一方、持論である9条への自衛隊明記には公明党が慎重姿勢を見せ、自民党内にも異論がある。何とか前に進めたいとの思いが強くあるようだ。

 だからといって、手前勝手とみられる発言では議論は深まらない。憲法とは何か、本当に変える必要があるのか。虚心坦懐(きょしんたんかい)に問い直すべきだろう。

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