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 北朝鮮が2014年、拉致被害者ら2人の神戸市出身者が入国していたと日本側へ伝えていたことが分かった。

 政府が拉致被害者に認定する12人のうちの1人、田中実さん=失踪当時(28)=と、「拉致の可能性が否定できない」とする特定失踪者の金田龍光さん=同(26)=だ。

 北朝鮮は田中さんについて「入国を確認できない」としていたが一転、主張を変えた。金田さんは北朝鮮が初めて入国を認めた特定失踪者となる。

 拉致問題の進展がなかった中での新情報に、全国の拉致被害者らの家族からは期待の声が上がる。一方で、安倍政権がなぜ4年間も公表しなかったのかと疑念を抱くのも当然だろう。

 北朝鮮がこの2人について情報を出した意図は何か。政府の対応に問題はなかったか。

 南北、米朝首脳会談に向けた調整が始まるなど朝鮮半島を巡る情勢が大きく変化する中、拉致問題打開への道筋を見いだすためにも、しっかり検証する必要がある。

 2人は同じラーメン店の同僚で、田中さんは1978年6月、成田空港から出国後、失踪した。北朝鮮工作員のラーメン店主に誘い出され、ウィーン経由で拉致された疑いがある。金田さんは田中さんに会うため「東京に打ち合わせに行く」と周囲に語ったまま、消息を絶った。

 日朝は14年5月、拉致問題の再調査などを盛り込んだ「ストックホルム合意」を交わした。北朝鮮が2人の入国情報を日本に伝えたのは、その前だったという。

 政府関係者は、情報の経緯を直接確認できず「公表できる状況ではなかった」とするが、公表されていれば拉致交渉や国内世論に大きな影響を与えていたのは間違いない。

 北朝鮮は対話路線に大きくかじを切り、中国との首脳会談にも臨んだ。米中韓が距離を縮める一方で、日本は蚊帳の外に置かれる展開が懸念される。

 制裁強化一辺倒の安倍政権は、日朝首脳会談実現へと戦略転換を図り始めた。膠着(こうちゃく)状態が続く拉致問題の解決に向け、北朝鮮の意図を慎重に分析しながら積極的に動くべきだ。政権の外交力が問われる。

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