社説

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 食事の提供などを通して地域の子どもを支援する「子ども食堂」が各地で増えている。

 2012年に東京で始まったとされ、民間団体によると全国で2286カ所に上る。本紙の調査では兵庫県内に98カ所、最も多い明石市には22カ所ある。

 もとは貧困家庭や、家族の事情で一人で食事をする子ども向けだった。今は誰でも利用できるところが多く、地域で子どもを見守る場になっている。

 運営するのは民間団体や個人、NPO法人、企業などさまざまだ。学校近くの公共施設で、自宅や店舗の一角で、みんなで温かい夕食を囲む。朝食を出すところもある。

 子どもたちの力になりたい-。そうした思いを行動に移す住民主体の「輪」が広がっていることは心強い。

 きょうは「こどもの日」。未来の担い手の可能性を広げ、後押しするために何が必要か。共に考えたい。

      ◇

 夕方、宝塚市総合福祉センターに子どもたちが集まりだした。民間団体が月2回開く「たからづか子ども食堂」である。

 この日は竹の子ご飯、揚げシューマイのあんかけ、サラダ、みそ汁が並んだ。ボランティアスタッフの手作りだ。料金は100円、大人も300円で利用できる。親子連れや高齢者の姿もあった。

 3人の子と訪れた母親(31)は「ほっと一息つける。育児に追われる毎日なのでありがたい」と笑顔を見せた。

 食事を済ませた子どもたちは宿題を教え合ったり、スタッフに工作を習ったりして思い思いに過ごす。午後8時までに約40人がやって来た。

見えない貧困状態

 たからづか子ども食堂は16年10月に活動を始め、これまでに延べ千人以上が利用した。

 寄付金や助成金などで運営するが、資金繰りが悩みの種だ。ボランティアの確保やスキルアップも課題という。

 活動のきっかけは代表を務める須藤榮一さんのある体験だ。

 数年前、宝塚市内のスーパーで3歳ぐらいの女児が床に座り、スナック菓子の袋を開けてむさぼるように食べていた。ほかの客は見て見ぬふり。心配して見ていると「おじちゃん、おなかすいた」と駆け寄ってきた。

 家を訪ねると母親は仕事で不在だった。帰宅を待って話を聞き、厳しい状況を知る。夫の暴力から逃げてきたこと、居場所を知られるのを恐れて保育所に預けるのを躊躇(ちゅうちょ)していること。

 「空腹の子どもや困っている親が近くにいるのに見えていなかった」。ボランティア経験の長い須藤さんは母親に生活保護の申請を勧め、仲間に子ども食堂の開設を呼びかけた。

 日本の子どもの7人に1人は貧困状態にある。ひとり親世帯では2人に1人が該当する。先進国で最悪のレベルだ。

 14年に施行された子どもの貧困対策法には、貧困率の低下などの具体的な数値目標が盛り込まれなかった。都道府県が策定する貧困対策計画も努力規定にとどまり、実効性に欠ける。

 働き続けても低所得から抜け出せない非正規労働や、生活保護費の切り下げも子どもの貧困に結びつく。

自己責任を超えて

 「困難を抱える子やその親を公的支援につなげる必要がある。学校や福祉分野と情報共有するなど、連携が鍵になる」

 神戸市内で子ども食堂の運営にかかわる神戸親和女子大学の戸田典樹教授(社会福祉学)はそう指摘する。

 兵庫県をはじめ子ども食堂を補助する自治体は増えている。しかし、行政に頼りすぎると、運営が柔軟さを欠く懸念がある。地域密着で息長く活動するには薄く広く資金や物資などの支援を集める仕組みが必要だ。

 放課後に校区外に出ることを禁じている小学校が多いことを考えれば、校区ごとに子ども食堂があるのが理想的だろう。

 気がかりなのは、子どもを持ち、育てることに「自己責任」を求める風潮だ。貧困は本人の努力不足との声も聞かれる。

 しかし貧困は世代を超えて引き継がれる。解消には労働政策や社会保障を含めた幅広い議論が求められる。

 子どもの貧困をなくすことは未来への投資といえる。自己責任論を超えて、社会全体で「負の連鎖」を断ち切ることが重要ではないか。

 子ども食堂はそうした問題意識を共有する出発点になる。貧困のため将来をあきらめる子どもがいなくなるよう、取り組みを地域で根付かせ、広げたい。

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