社説

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 学校現場と教育委員会が、自ら命を絶った生徒や保護者の無念を踏みにじっていた。子どもたちに「命」の大切さを説く資格があるといえるのか。

 2016年10月に神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒が自殺した問題で、いじめをうかがわせる他生徒からの聞き取りメモがあったにもかかわらず、市教委の首席指導主事が当時の校長に隠蔽(いんぺい)を指示していた。

 市教委から依頼を受けた弁護士による調査で、驚くべき事実が判明した。文部科学省も事態を重く見て指導に乗り出した。

 「メモの存在が明らかになると遺族から情報公開請求をされ、事務作業が煩雑になる」。当時、遺族対応に当たっていた首席指導主事はそう考え、隠蔽を指示したとされる。

 指示を受けた校長も「遺族感情を揺さぶりたくない」との思いから、遺族に「メモは廃棄した」とうそをついた。

 行き過ぎた事なかれ主義で、あまりにも悪質だ。

 遺族からの問い合わせや神戸地裁による関係書類の保全手続きなど、何度も訂正する機会がありながらうそを重ねた。

 遺族は本紙の取材に「なぜ娘が亡くなったのか知りたいという親の思いが軽々しく扱われ、がくぜんとする」と語った。心情を察するにあまりある。

 今回の調査は当時の教職員や市教委の担当者ら22人に対して行われた。市教委は会見で「2人以外に経緯を知る教職員はいなかった」と結論づけ、組織的な関与を否定した。

 だが問題のメモは、校内の教職員が共有していた。その上校長が「存在しないものとして扱う」と口止めしていた。学校に派遣されていた市教委職員にも渡されていたという。

 組織的な隠蔽が疑われても仕方がない状況である。

 前教育長もメモの存在を知って調査を指示したが、報告を求めないままだった。ずさんな対応と言わざるを得ない。

 今後は市こども家庭局が新たな調査組織で自殺といじめの因果関係を再調査する。年内にも結果を公表する方針だ。

 再発防止のためにも、教育現場の信頼回復のためにも、遺族の気持ちに寄り添いながらの事実解明が不可欠である。

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