社説

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 猛暑が懸念される東京五輪・パラリンピックのために、全国にサマータイム(夏時間)を導入してほしい。組織委員会の森喜朗会長がそんな提案を安倍晋三首相に持ち掛け、自民党で検討することになった。

 マラソンや競歩選手の体調に配慮して、日本標準時間を夏季限定で2時間早めるという。

 サマータイムは1948年に日本でも採用されたことがある。労働の長時間化などで国民の反発を招き、52年に廃止されている。過去に学ぼうという意識はないのだろうか。あまりに乱暴な発想で理解に苦しむ。

 現代の日本に導入する場合、さまざまな問題点が指摘されている。選手の健康に配慮するなら、競技時間を早めればいいのではないか。森会長は速やかに提案を取り下げるべきだ。

 まず健康に及ぼす悪影響の懸念が極めて大きい。

 サマータイムのメリットとして、余暇増加と経済効果が挙げられる。2時間前倒しになれば退社が午後3時半や4時になる想定だ。しかし、終業時間に緩い日本の職場では残業が2時間長くなるだけとの声は多い。

 ただでさえ先進諸国で最短の日本人の睡眠時間が削られ、さまざまな病気を引き起こす要因となりかねない。生活のリズムを変えることは、高齢者や持病を抱える人の負担となる。

 またシステムの大規模改修が、全国の自治体や交通機関、流通など各方面で必要となる。社会全体でIT化が進んだ現在、導入するリスクの大きさはかつてとは比べものにならない。

 開幕まで2年弱ではとても時間が足りない。システム障害などで国民生活を混乱に巻き込む恐れがある、と批判の声が全国で上がっている。

 省エネ効果も疑問だ。朝から30度を超える日も珍しくない日本の夏では、逆に冷房使用時間が長くなって電力消費を増やすと指摘されている。

 サマータイムが定着している欧州連合(EU)でさえ、不利益が大きいとの声が強く、廃止が検討されている。

 五輪のため国民に負担を強いる案を安易に打ち出すようでは、組織委のマネジメント能力に疑問を持たざるを得ない。運営への不安は高まるばかりだ。

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