社説

  • 印刷

 東京電力福島第1原発の周囲には、浄化処理後も放射性物質「トリチウム」を除去し切れなかった汚染水が大量に保管されている。その量は92万トン、タンク680基分に達している。

 廃炉作業に向け、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し作業のスペース確保のため、タンクの撤去方針が決まっている。トリチウムは人体への影響が小さく、国際条約でも海へ流すことが認められており、政府の小委員会は海洋放出が最も経済的との結論を示した。

 ところがその水に、トリチウムと異なる放射性物質も含まれていたことが判明した。半減期が1570万年という長寿命の物質が、法令基準値を大幅に上回って検出される例もあった。

 水で薄めれば、果たして海洋放出は可能なのか。政府は今月末に処分方法についての公聴会を予定しているが、いったん議論を棚上げして残留物質の実態把握を急がねばならない。

 今回、トリチウム以外の残留物質が判明したのは、東電が2017年度に測定した浄化処理後の水だ。

 東電は14年度から多核種除去設備(ALPS)を導入して汚染水を浄化しているが、当初は性能が安定しないまま運転していた時期もあった。より高濃度の放射性物質が残留している可能性も否めない。

 驚くのは、東電が詳細な調査をしていない点だ。こうしたデータが判明した以上、タンクをすべて検査するとともに、ALPSの機能も厳しくチェックする必要がある。

 安倍晋三首相は5年前の東京五輪招致のスピーチで「事態はコントロールされている」と国際社会に断言した。実際は大量の汚染水対策に追われ、めどが立たない状況だ。

 福島県産食品への風評被害も収束していない。今も米国や中国、韓国など25カ国・地域が輸入規制措置を続けている。

 このまま汚染水処分の議論を進めれば、風評被害を加速させるだけでなく日本の国際的信用の低下にもつながりかねない。漁業者など地元の理解も得られないだろう。

 今後の廃炉作業を円滑に進めるためにも、政府と東電は処分策を丁寧に模索するべきだ。

社説の最新
もっと見る

天気(9月23日)

  • 30℃
  • 26℃
  • 60%

  • 31℃
  • 25℃
  • 70%

  • 32℃
  • 26℃
  • 50%

  • 30℃
  • 26℃
  • 50%

お知らせ