社説

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 東京五輪・パラリンピックのボランティア募集が始まった。大会組織委員会と東京都は計11万人の確保を目指す。

 世界的イベントに心躍らせる希望者は多いだろう。一方、交通費として千円相当が支給されるだけで地方からの参加は負担が重く、「やりがい搾取」などの批判がやまない。条件や待遇をさらに改善すべきだ。

 厳しい批判の根底には、スポンサーや収益優先の考え方が色濃い五輪の姿がある。

 前回の東京五輪は競技環境重視の考え方から気候の良い10月に開かれた。今回は、国際オリンピック委員会(IOC)の要望に応じて暑さが厳しい7、8月開催となった。米国プロスポーツの端境期に放送したい米テレビ局の意向を無視できない、IOCの体質が背景にある。

 事業費は1兆3500億円に上る。実質的な商業イベントといえるのに、なぜこれほど大人数のボランティアを求めるのか。運営業務の通訳など大会に不可欠な多くの業務まで依存する点にも疑問を抱く。

 心配なのは、ボランティアが経費削減のための安価な労働力扱いされないかという点だ。

 前回リオデジャネイロ五輪では24万人もの希望者が応募に殺到した。5万人が選ばれ登録したが、長時間の奉仕を強いられたことなどから、3割が業務を放棄する事態に陥った。IOC理事が高い日当を得る五輪運営の在り方に、不満が高まったのも原因と指摘された。

 今回は酷暑の中で1日8時間、10日以上参加するなどの条件がつき、「最後まで役割を全うする方」との方針が示されている。責任感から無理をして熱中症になる人が続出しないか。ボランティア保険の内容などが示されていないのも問題だ。

 文部科学省などは学生の参加を促すため、大学に講義や試験の日程変更などを求めている。違和感のある対応だ。大学の単位と引き換えに労働力提供を期待しているなら、「上から目線」と言われても仕方ない。

 暑さ対策や地方の希望者への支援など課題は山積する。自主性や主体性というボランティア本来の在り方を尊重し、支えたい人が納得して参加できる環境を整えるべきだ。

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