社説

  • 印刷

 安倍晋三首相が自民党総裁選で連続3選を果たし、内閣改造と党役員人事を終えた。秋の臨時国会の焦点となるのが、首相が意欲を示す党改憲案提出の動きである。

 「いよいよ憲法改正に取り組む」。総裁選に続く先月の党両院議員総会で、首相はこう決意を述べた。おとといの記者会見では、具体的な改正条文を示して連立与党の公明党や国民の理解を得る考えを強調した。

 改憲は、首相にとって年来の「悲願」とされる。最後の3年の総裁任期を迎え、期するところがあるようだ。

 東京五輪・パラリンピック開催の年に新憲法を施行する意向を昨年、表明している。国民投票を含めたスケジュールを頭に描いているとみていい。

 だが、改憲は社会保障や経済対策などと比べて緊急度の高い課題とは言いがたい。国民の多くは首相の姿勢に懐疑的だ。数の力で押し通せば対立と混乱を深める事態になるだろう。

 いくら個人の思いは強くても、政権運営とは一線を画するべきだ。国政の最高責任者として節度ある対応を求めたい。

 首相は「改憲は党是」と述べてきた。確かに2010年の自民党の綱領には「新憲法の制定を目指す」とある。ただし、後半に列挙された政策目標の一つで、「新しい憲法の制定」を冒頭に掲げた05年の「新綱領」からは後退した印象を受ける。

 党の憲法草案を公表したが、改憲を急ぐ首相の考えを全員が支持しているわけではない。総裁選では石破茂元幹事長が首相の姿勢を批判し、党内論議が不十分な段階での拙速を戒めた。

 首相が掲げるのは「戦争放棄」などを定めた憲法9条を残して、自衛隊の存在を明記する案だ。自衛隊の違憲論議に終止符を打つためとするが、9条改正への反発をかわして改憲にこぎつける狙いが見て取れる。

 しかし、総裁選後の共同通信の世論調査では、臨時国会での改憲案提出に51%が反対している。「国民の理解がないまま国民投票にかけてはいけない」という石破氏の言葉は正論である。憲法のあり方については、先を急がずじっくりと議論したい。前のめりは禁物だ。

社説の最新
もっと見る