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 今年のノーベル平和賞は、紛争地での性暴力と戦ってきた2人に決まった。

 1人はコンゴ(旧ザイール)で民兵らから被害を受けた女性の治療に尽力してきた産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏だ。もう1人は過激派組織「イスラム国」(IS)に性奴隷として拘束されて生還し、暴力根絶を訴え続けるイラク人女性のナディア・ムラド氏である。

 ノーベル賞委員会は、授賞理由に「戦争の武器としての性暴力終結に向けた努力」を挙げた。性暴力ゼロへの取り組みを促す授賞と言えるだろう。

 紛争地の性暴力はISが支配したイラクやシリアのほか、中央アフリカなどで横行し、女性の人身売買も後を絶たない。しかし国際社会の関心は決して高くなかった。根絶に向け、世界全体で取り組まねばならない。

 紛争地で村を攻撃した武装組織は、女性を集め家族の前で襲う様子を見せるなどして、本人だけでなく家族などにも心理的な傷を与え、地域社会での影響力を持とうとするのだという。「コストの安い『戦争の武器』」と言われるのはそのためだ。国際人道法で禁止されており、戦争犯罪とみなされる。

 ムクウェゲ氏は戦乱が続くコンゴ東部に病院を設立し、被害女性を5万人以上受け入れてきた。国際社会に窮状を訴えたが、武装集団に命を狙われ、一時は家族と欧州へ逃れた。

 今は地元女性の声を受けて現地に戻り、診療を再開している。迫害された人々を守るため、命をなげうっての行動だ。

 少数派ヤジド教徒のムラド氏はISに拉致され、性奴隷として売られたという。IS支配地域から脱出後、同様の苦境を強いられた女性の実態を世界に告発してきた。2年前には人身売買被害者らの尊厳を訴える国連の親善大使に就任している。振り返るのも苦痛に違いない壮絶な過去に、言葉を失う。

 「#MeToo」(「私も」の意)と呼ばれる性被害告発の動きは、日本も含め世界各国で広がっている。

 性被害を生む紛争や戦争をなくすとともに、私たちの足元でも女性や弱い立場の人の境遇に思いを寄せ、全ての人の尊厳が保たれる社会をつくりたい。

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