社説

  • 印刷

 あの圧倒的な強さがもう見られないのは残念だが、偉大な功績への賛辞と感謝の言葉を贈りたい。

 レスリング女子で、五輪と世界選手権を合わせて16大会連続世界一を成し遂げた吉田沙保里さんが引退会見を開いた。

 リオデジャネイロ五輪の決勝に敗れてから2年半の間、現役続行か引退かで悩んだという。銀メダルで競技生活を終えることへの自身の葛藤と、周囲の期待の声もあって揺れ続けた。

 2020年の東京五輪が近づく中、決断の時は迫っていた。改めて自分と向き合い、「全てやり尽くした」と、すがすがしい表情で語った。

 日本の女子レスリングの発展は彼女の活躍とともにあった。

 正式種目となった04年のアテネ五輪で、金メダル第1号となる。代名詞の高速タックルは父の故・栄勝氏との厳しい練習で磨き上げた技だ。01年からリオ五輪で敗れるまで個人戦で勝利を積み重ね、206連勝という金字塔を打ち立てた。12年にはレスリング界で初めて国民栄誉賞を受賞している。

 吉田さんの功績は競技以外でも極めて大きい。

 13年にレスリングが五輪競技除外の危機にひんした時には、存続に向けて尽力した。世界選手権の予選を控えた身にもかかわらず、協会幹部らと国際オリンピック委員会(IOC)理事会に出向き、世界に存続を呼び掛けた。

 メディアにも積極的に登場し、レスリングの魅力を広めた。とりわけリオ五輪後に休養に入ってからはテレビ番組やCMなどによく出演し、国民的な人気者となった。吉田さんに憧れて多くの子どもたちがレスリングを始め、全国高校総体では17年に正式種目入りしている。

 これまで選手兼任で務めてきた日本代表コーチは続けるという。王者の背中を見て育ち、東京五輪の頂点を目指す若い選手を精神的にも支えてほしい。

 会見では第二の人生の夢について「女性としての幸せを絶対つかみたい」と語った。

 明るく気配りを絶やさない性格で競技のために尽くしてきた人だ。それだけに、これからは普通の女性としての人生をもっと楽しんでもらいたい。

社説の最新
もっと見る

天気(10月19日)

  • 25℃
  • 22℃
  • 70%

  • 22℃
  • 18℃
  • 70%

  • 26℃
  • 21℃
  • 70%

  • 25℃
  • 20℃
  • 80%

お知らせ