社説

  • 印刷

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖移設を巡る県民投票は、「反対」が43万票を超え、有効投票総数の約72%を占めた。辺野古反対を掲げ、県知事選で過去最高となった玉城デニー知事の得票数をも上回っている。

 結果に法的拘束力はない。安倍晋三首相は知事と会談する意向を示す一方、工事強行の姿勢は変えていない。

 だが民意は明確に示された。これ以上の強行は県民の意思を踏みにじることになる。民主主義で許される行為なのか。

 政府は直ちに工事を中止するべきだ。

      ◇

 辺野古移設で普天間の危険性は除去される。これ以上先送りできない-。政府はそう主張してきた。

 しかし今回の投票では、普天間の地元・宜野湾市でも移設への反対が66・8%と多数を占めた。政府の論拠に現場でも疑問符がついたといえる。

 そもそも県内移設では沖縄全体の負担解消につながらない。辺野古が完成しても普天間が直ちに返還されない可能性が、日米合意文書に記されている。

 宜野湾の反対は、そうした問題点を県民が認識している証しだろう。

 面積では日本の0・6%にすぎない沖縄に、在日米軍専用施設の74%が集中する。その現状を安全保障の観点からやむなしとする声は、本土に根強い。

 普久原均・琉球新報編集局長は本紙への寄稿で、全く異なる米軍の見方を明らかにした。2006年に日米で在日米軍再編に合意する前、沖縄の海兵隊を九州や北海道に移すことを米軍が提案したというのだ。

 しかし政府は本土の反発を恐れ、検討しようとしなかったという。沖縄の声は軽視し、本土の反発は回避する。普久原氏はこれを「ダブルスタンダード」(二重基準)と表現する。そうした状況は、今も大きく変わっていない。

 12年に森本敏防衛相(当時)が、普天間の移設先は「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的には最適だ」と述べたのも同じ理屈だろう。

 安全保障の負担を特定の地域に押しつけることに、多くの国民が疑問を持とうとしなかったことが、沖縄の苦悩を生みだした一因といえる。

憲法の条文踏まえ

 住民投票が強制力を持つ場合を示す憲法の条文がある。特定の地方公共団体に適用される法律の制定には住民の過半数の同意が必要とする95条の規定だ。

 住民の意思に基づく地方自治の「本旨」を守るための定めとされている。

 政府は、辺野古移設は法律でなく、「日米地位協定」に基づく施設提供との見解を示している。だが移設後は国内法が適用されず、自治体の行政権も及ばない。

 地方公共団体の運営に関する事項は法で定めるとした憲法92条を踏まえれば、基地建設にはその地域だけの特別法が不可欠であり、95条の住民投票で同意を得る必要がある-。憲法学者の木村草太首都大学東京教授はそう指摘する。

 95条の住民投票を経て制定された法律は、戦後の復興期に15本ある。兵庫県内では1950(昭和25)年に神戸国際港都建設法、翌51年に芦屋国際文化住宅都市建設法が公布された。

 ただいずれも都市計画に地域の特色を反映させて国も支援する趣旨だ。神戸と芦屋の住民投票では当時の新聞に「賛成の票が圧倒的」「輝く新生のスタート」などの文字が躍り、政府と対立する問題ではなかった。

 住民投票が実施されたのは、憲法施行から日が浅く、尊重する気風があったからだろう。

 それから60年余。反対への民意が明確になっても、政府は県の反対を無視し住民の意思も聞かずに工事を進める。

 安全保障は国の専権事項であり、地元の意向を考慮する必要はない。そうした考えは、憲法が掲げる地方分権や民主主義の理念に反する恐れがある。

地位協定も見直せ

 辺野古計画では新たな問題点も浮上した。予定海域の軟弱地盤が判明し、政府は想定外だった約7万7千本のくい打ち込みを計画している。

 県の試算では、地盤改良に伴う建設費は計画の「3500億円以上」から2・5兆円に膨み、工期は5年から13年に伸びる。だが野党の質問にも政府は明確に答えようとしない。

 事実上、計画は大きな壁に突き当たっている。もはや「唯一の解決策」と言える状況ではない。政府は今度こそ立ち止まらねばならない。

 沖縄に「寄り添う」というのなら、政府は基地を沖縄に集中させる必要性があるのか米国と真剣に議論すべきだ。同じ第2次世界大戦の敗戦国でもドイツやイタリアは駐留米軍に国内法を適用している。地位協定の見直しも急務といえる。

 なぜ、沖縄だけに過剰な負担を強いるのか。県民投票が示した課題を、本土に住む私たちも考える必要がある。

社説の最新
もっと見る

天気(8月14日)

  • 34℃
  • 28℃
  • 20%

  • 37℃
  • 25℃
  • 20%

  • 35℃
  • 28℃
  • 20%

  • 37℃
  • 27℃
  • 20%

お知らせ