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 旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が繰り返されていた問題で、被害者に1人当たり320万円の一時金を支給するなどの案で与野党が合意した。4月初旬に法案を国会に提出し、月内の成立と施行を目指す。

 自民、公明両党のワーキングチームと、野党が加わる超党派議員連盟が議員立法を協議していた。一本化で参院選前に早期救済を図ったとみられる。

 ただ、神戸などで起こされた訴訟では1千万~3千万円台の国家賠償が請求され、隔たりは大きい。原告が求める違憲性の確認にも言及しない内容で「被害に十分向きあっていない」と批判の声が上がっている。

 法案に記す「反省」と「おわび」を言葉だけにせず、さらに救済策を検討しなければならない。深刻な人権侵害を戒めとする国会決議も行うべきだ。

 旧法は「不良な子孫の出生防止」を掲げていた。最大の問題は、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に、本人の同意がなくても不妊手術を認めたことにある。1996年に「母体保護法」に改められ、同意によらない手術の規定は削除されたが、50年近くも人道に反する施策が続けられた。

 被害者は約2万5千人で、1万6500人は本人の同意がない強制とみられる。国や県の統計では、兵庫でも約350人が手術を強いられたとされる。

 支給される一時金の額は、同様の被害を補償したスウェーデンに倣ったという。強制だけでなく「同意」とされた事例も対象とし、記録がなくても手術痕や関係者の証言などの間接証拠を踏まえ、専門家の審査会で認定する仕組みを立ち上げる。

 一方で反省とおわびの主語は「われわれ」とし、国の責任は明言しない。各地の訴訟で国は「当時の法律では違法ではなかった」と責任を否定しており、それに配慮したとみられる。

 ハンセン病補償法で認められた配偶者や遺族への補償も盛り込まれず、対象を本人に限定した点も、踏み込みが足らない。

 これで全てを幕引きにしてはならない。近く仙台地裁で初の司法判断が示される見通しだ。それも踏まえ、引き続き被害者救済に全力を挙げる。政府と国会の責任は重大だ。

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