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 多様化する実社会と司法の溝は広がるばかりではないか。

 戸籍法に夫婦別姓を認める規定がないのは憲法違反だと首都圏の男女4人が訴えた裁判で、東京地裁は合憲と判断、請求を棄却した。原告側は控訴する。

 判決は「法律上の姓は一つ」とし、戸籍法が別姓を認めないのには合理的な根拠があると結論づけた。最高裁は2015年、日本社会に定着しているなどの理由で夫婦同姓を原則とする民法の規定を「合憲」とする初判断を示している。

 固い司法の扉を押し開こうと、別の角度から挑んだのが今回の訴訟だ。戸籍法では、日本人が外国人と結婚する場合は別姓を選べるが、日本人同士では選べない。原告らは、この規定に着目し、法の下の平等を定めた憲法に反すると主張した。

 原告の一人、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長(47)は、結婚で妻の姓に改姓したが、仕事は旧姓で通している。場面に応じどちらの姓を使うか判断を迫られるストレス、株式名義の変更にかかる多額の費用など旧態依然の法制度が経済的損失を招いている-。ビジネスの最前線からの訴えは説得力があった。

 ところが、地裁判決は最高裁判断をなぞっただけで、不利益にどう対応するかは「国会の裁量に委ねられる」とした。価値観の多様化に向き合おうとしない司法への失望は大きい。

 内閣府が昨年2月に公表した調査で、希望すれば夫婦がそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の法整備を容認する人が42・5%で、「必要ない」の29・3%を上回った。5年前の調査では、どちらも30%台でせめぎ合っていたが、全世代で容認派が増えた。結婚で姓を変える、変えないを選べる制度への理解は広がっている。

 法制審議会は1996年、選択的別姓を認める民法改正案を答申したが、法改正は棚上げされたままだ。夫婦同姓の強制は女性差別だとして国連からも再三、是正勧告を受けている。司法が動かないからといって国会の怠慢は許されない。

 国民の意識は柔軟で寛容だ。選択的夫婦別姓の法制化に向けた議論を本格化させ、立法府の責任を果たさねばならない。

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