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 乗客106人が犠牲になった尼崎JR脱線事故は、きょうで発生から14年になる。

 JR西日本は今年の慰霊式を、事故現場一帯に整備した追悼施設「祈りの杜(もり)」で開く。木々で囲まれた慰霊碑には、遺族から「生々しさを消そうとしている」との批判が上がる。

 悲惨な記憶が、JR西の社内で風化しかねない。遺族らがそんな懸念を強く抱くのは、事故を招いた企業体質の刷新が、いまだ道遠しと受け取れる出来事が相次いでいるからだ。

 新幹線「のぞみ」が破断寸前の台車で運行を続けた問題で、国の運輸安全委員会は異音があっても終点まで走らせるのが「恒常化していた」と指摘した。新幹線のトンネル内に社員を座らせ、高速走行の風圧を体感させる危険な研修を行っていたことも明るみに出た。

 安全点検より運行継続を優先する。研修でも社員の安全を軽視する。尼崎事故の教訓をないがしろにする対応に、社内で異論は出なかったのか。

 経営陣を筆頭に全社員が安全を行動原理として心に刻み、実践に移せるよう、不断の努力を続けねばならない。

 6月には、1991年に発生した信楽高原鉄道事故の遺族や弁護士らでつくる民間組織「鉄道安全推進会議(TASK)」が、26年の歴史に幕を下ろす。

 真相究明や再発防止を国に求め、鉄道事故調査の専門組織設置を実現させた。国土交通省が公共交通事故被害者の支援窓口を設けたのも、尼崎事故の遺族らとともに申し入れを重ねた成果だ。遺族の無念が、行政を動かす力となった。

 一方、大企業は多くの部署に責任が分散し、自らの努力だけでは体質は容易に改まらない。死亡事故などを起こした企業・団体の刑事責任を問う「組織罰」の法整備を前向きに検討する必要がある。

 「祈りの杜」では、衝突の痕跡を残すマンションの現場に遺族らが花や菓子などを供える。時を経ても、肉親や友人を失った悲しみは心に重くのしかかり続ける。

 それが少しでも和らぐ日がくるとすれば、安全最優先の企業に変貌を遂げたと、JR西が社会の評価を受けるときだ。

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