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 アイヌの人たちが誇りを持って生活できる社会の実現を目指す「アイヌ民族支援法」が、このほど国会で成立した。

 アイヌを初めて「先住民族」と明記した法律だ。これまでもアイヌの文化振興を目的とした法律があったが、和人とは異なる歴史を持つ民族としての位置づけが曖昧なままだった。

 新法は文化の保護に加えて観光、産業の振興などでも国民の理解を促進する対策を、政府と自治体に求めている。現在、アイヌの人たちは全国に居住しており、北海道以外の地域でも、多民族・多文化共生を目指す取り組みを進めたい。

 もともとアイヌ民族は北海道など北方の地で独自の言語や文化を育んできた。しかし明治以降、政府による同化政策で伝統的な生活が抑圧された。

 流れが大きく変わったのは1990年代のことだ。

 復権を訴える萱野茂氏が初めて参院議員となり、アイヌ語で政府の考えをただした。差別的な北海道旧土人保護法が廃止され、「アイヌ文化振興法」が制定されたのもこの時期だ。

 国連での「先住民族の権利に関する宣言」を受け、国会も重い腰を上げる。2008年、衆参両院が政府にアイヌを「先住民族」と認めた上で対策を講じるよう促す決議を行った。

 それを受けて政府は検討を重ね、「先住民」の立場を明確にした。だが、時間がかかりすぎた印象はぬぐえない。

 新法に基づき、文化や産業、観光の振興に向けた交付金制度が創設される。北海道白老町では東京五輪・パラリンピック開催年のオープンに向けて、博物館や公園などを含む「民族共生象徴空間」の整備が進む。

 ただ、北海道が行った実態調査では、アイヌの人たちの生活は依然、厳しい状況にある。大学進学率は居住地域の平均より10ポイント以上低く、生活保護受給者の割合は1・1倍だった。文化振興などとともに生活支援にも力を入れなければならない。

 国連の宣言で「民族の権利」とされた自決権や教育権は、今回の新法には盛り込まれなかったが、国会は付帯決議で宣言を尊重するよう求めた。政府は国際社会の理念を踏まえ、幅広い施策を講じるべきだ。

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