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 卑劣なテロが、世界各地で続発している。危険な核物質を抱える原子力発電所が対象となって破壊されるような事態に陥れば、社会全体に甚大な影響を及ぼす。

 原子力規制委員会は、原発に義務付けたテロ対策施設が期限内に完成しなければ、運転停止を命じると決めた。当然の判断である。

 規制委は当初、2013年の新規制基準施行から5年後を設置期限としていたが、再稼動の審査が長引き、審査合格から5年に緩めた。それでも工事が間に合わないとして、電力各社は期限の再延長を求めていた。

 関西電力など3社の計10基で工事が難航し、完成は最長で2年半遅れる見込みだ。最も早く来年3月に期限を迎える九州電力川内原発1号機をはじめ、再稼働した原発の多くが停止する可能性がある。

 規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長は「(延長を)繰り返していると安全向上は望めない」と各社の姿勢を強く批判した。期限は最初から分かっていたはずだ。危機意識が甘すぎたのではないか。

 テロ対策施設は、原子炉建屋から離れた場所に電源や冷却ポンプ、制御室などを設ける。原子炉建屋に航空機が衝突するような事態が起きても、遠隔操作で原子炉を冷やし続けられるようにする。

 福島第1原発事故の損害賠償訴訟では、東京電力が津波を予見できたのに対策を怠ったとする判決が相次いでいる。万一の事態に備える意識に乏しければ原発を運転する資格がないことを、電力業界は改めて認識するべきだ。

 原発が止まれば経営に影響するとの声も電力会社からは聞こえる。何よりも優先すべきは安全だ。対策施設の建設を急ぐ必要がある。

 ただ、原発の運転が止まっても、構内には使用済み核燃料が保管されており、テロの標的となるリスクは残る。この点については、規制委も電力会社も緊迫感が欠けている。

 国際社会では、核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」が重要課題となっている。悲惨な事故の経験に立ち、政府は電力各社に対策を強く働きかけねばならない。

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