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 安倍晋三首相が日本人拉致問題の解決に向け、条件を付けずに日朝首脳会談の実現を目指す方針を表明し、トランプ米大統領に伝えた。拉致問題の進展を開催の前提条件とする従来方針を事実上転換した格好だ。

 2度の米朝首脳会談でも拉致問題の進展はなかった。首相自ら金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と交渉し、行き詰まりを打開しようとする狙いだろう。

 だが、金氏がどう反応するかは見通せない。政府は北朝鮮の真意を慎重に見極め、具体的な成果を引き出す戦略を練った上で万全の準備を整えるべきだ。

 気がかりなのは、このタイミングである。北朝鮮が今月4日に日本海に向けて発射した飛翔(ひしょう)体が、波紋を呼んでいるさなかだ。飛距離は最長240キロに達し、韓国や在韓米軍を十分に脅かす威力がある。専門家の多くが弾道ミサイルと見ており、事実なら国連安全保障理事会の制裁決議に違反する。

 東アジア地域の緊張を高める振る舞いで、見過ごすことはできない。しかし、ポンペオ米国務長官は、飛翔体は日米韓3カ国に「脅威を与えなかった」と述べ、世論の沈静化を図った。3カ国とも弾道ミサイルかどうかの判断を保留している。

 2月の米朝再会談が決裂し、北朝鮮の非核化を巡る両国の協議は再開のめどすら立っていない。3カ国の煮え切らない態度の背景には、交渉の継続を優先し、北朝鮮への直接的な批判を避ける意図がうかがえる。

 だが、各国が外交成果と引き換えに挑発行為を黙認すれば「軍備強化は許される」との誤ったメッセージを北朝鮮に与えかねない。日米韓は飛翔体の分析を急ぎ、制裁決議違反と確認されれば安保理での厳しい対応を検討しなければならない。

 北朝鮮は、米国に対する軍事的駆け引きをこれ以上続けてはならない。軍事衝突という最悪の事態に発展する恐れもある。金氏が求める制裁解除を実現するには、核や拉致問題など国際社会の懸念を解消するしか道はないと認識すべきだ。

 北朝鮮の非核化問題は正念場を迎えている。日米韓だけでなく、中国、ロシアを含む国際社会が対話の再開に向けて連携を強める必要がある。

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