社説

  • 印刷

 「仁徳天皇陵」と伝わる日本最大の前方後円墳「大山(だいせん)古墳」を含む大阪府の「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関から世界文化遺産に登録するよう勧告された。6月30日からの委員会で正式に決まる見通しだ。

 天皇や皇族が葬られたとされる「陵墓」の登録は例がない。認められれば、国内の世界遺産は文化、自然を合わせ計23件となる。文化遺産への登録は「富士山」以降7年連続で、朗報を心待ちにしたい。

 ただ、大山古墳は地元の伝承などから「仁徳天皇陵」と呼ばれてきたが、学術的には疑問視されている。国は詳細な内部の調査に踏み切るべきだ。

 百舌鳥・古市古墳群は、4世紀後半から5世紀後半に築造された、古代の王の墓群とみられる。勧告には、堺市などに点在する49基の古墳が含まれる。

 中でも大山古墳は、全長が500メートル近く、広さは47万平方メートルと甲子園球場の12個分もある。エジプトのクフ王のピラミッドや中国の始皇帝陵と並び世界三大墳墓の一つに数えられる。

 ユネスコの諮問機関は、古墳群を「傑出した古墳時代の埋葬の伝統と、社会政治的構造を証明している」と評価した。

 一方で、市街地に点在するため、勧告は開発の影響を懸念する。登録後は観光客の増加が予想され、保存管理面でいっそうの努力が求められる。

 今回、世界遺産の推薦書で、政府は教科書でも使われる「大山古墳」ではなく「仁徳天皇陵」と記載した。陵墓を管理する宮内庁の主張とされるが、築造と仁徳天皇の時代が合致しないとの説が有力で、「被葬者が誰か分からず、学術的に正しくない名称だ」と指摘する古代史の専門家は少なくない。

 古代の古墳は謎に包まれている。大山古墳では昨年、宮内庁が初めて堺市と共同で周濠(しゅうごう)の一部を発掘調査した。その結果、堀の堤の下から精巧な石敷きや円筒埴輪(はにわ)の列が見つかるなど、多くの発見があった。

 古墳内部は事実上「聖域」扱いされてきたが、そうした対応では国際社会も国民も歴史的な価値を十分に共有できない。人類全体の遺産とするには、史実に基づく判断が不可欠だ。

社説の最新
もっと見る

天気(8月18日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 10%

  • 37℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ