社説

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 千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さんが死亡した虐待事件の裁判がきのう、始まった。傷害ほう助罪に問われた母親のなぎさ被告は起訴内容を「間違いありません」と認めた。

 裁判の直前、新たな事実が明るみに出た。心愛さんが父親の勇一郎被告から性的虐待を受けていた疑いがあるというのだ。

 「パパが急にズボンを下ろしてきた。パンツも脱げた」。心愛さんは児童相談所の職員にこう打ち明けたという。懸命なSOSではなかったか。

 医師の診断結果は「性的虐待の疑いあり」だった。ところが、あろうことか児相は一時保護を解除した。

 千葉県児童家庭課が「性的虐待の疑いが確認できたのは1回だけ」などと釈明している点も見過ごせない。

 性的虐待は1回で終わることは少なく、繰り返される可能性が高いとされる。被害を受けた子どもは自分が悪いと思い込み、我慢する傾向が見られる。専門医に所見を求めるなど被害状況を確認すべきだった。

 心愛さんの情報は児相や学校、警察などでつくる協議会が共有していたとされる。だが、不手際が連鎖した。一連の対応の徹底的な検証が待たれる。

 この事件では、児童虐待とドメスティックバイオレンス(DV)への対応が連携できていない現状も浮き彫りになった。

 一家が以前暮らした沖縄県糸満市は、なぎさ被告が夫からDVを受けていることを把握していた。しかし、転居先の野田市のDV担当部署にはその情報が届いていなかった。

 裁判でなぎさ被告は「虐待を止めようとしたら暴力を振るわれた」などと述べた。勇一郎被告の支配下で家族が極限状態に陥っていた可能性もある。

 家族内で虐待とDVが併存する例は多い。にもかかわらず、虐待は厚生労働省、DV被害者の支援は内閣府などと所管省庁が異なる。母子ともに保護、支援するなど一体的に対応する態勢が求められる。

 DVを根絶するには、加害者への働きかけを強め、自らを省みるなどの教育を施す必要もある。その前に、弱い立場の子どもらが加害者から逃げるしかない状況を放置してはならない。

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