社説

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 刑事裁判に一般市民の感覚を反映させる目的で始まった裁判員制度がきょうで10年を迎える。これまでに約117万人が裁判員候補者に選ばれ、裁判員と補充裁判員を経験した市民は約9万1千人となった。

 「分かりやすさ」を重視して供述調書などの書面を厳選し、証人尋問を増やすなど、刑事裁判の風景は変わった。法律に詳しくない人が理解でき、自由に意見が述べられる。そうした環境づくりへの司法関係者の努力は、経験者の9割超が制度を肯定的に受け止めたアンケート結果などからも評価できる。

 制度はまだ定着の途上にあり、課題も少なくない。10年の成果を基に、より良き制度への改善を重ねたい。

 懸念されるのは、仕事などを理由に辞退する人の割合が増加傾向にある点だ。最高裁が10年を総括した報告書によると、2018年は過去最高の67%で、背景に審理の長期化や国民の関心低下があると分析する。

 最高裁は裁判員確保に支障はないとするが、楽観はできない。参加しやすい年齢や職業に偏れば、制度の根幹である幅広い市民参加が成り立たなくなる。「勤務先での休暇制度」など経験者らが指摘する支援の充実を図る必要がある。

 制度への関心を高め、不安を解消するには、裁判員を担った市民がその経験を広く社会に伝える仕組みが欠かせない。

 経験者からは、司法を身近に感じ、民主主義における役割や事件の背景にある社会問題への理解が深まったとの声が多く聞かれる。一方で、守秘義務のため真摯(しんし)に裁判に参加して考えたことを語れない葛藤を抱え、心理的負担にもなっている。

 厳し過ぎるとの声が多い守秘義務の緩和は重要な検討課題だ。経験者や弁護士でつくる団体は「国民の知る権利を妨げ、評議が適正か検証する材料も得られない」と批判する。

 性犯罪の厳罰化と刑法改正や、一審判決までに保釈を認める割合の向上などは裁判員裁判の導入がきっかけとなった。

 法律のプロと市民が健全に協力し合ってこそ「開かれた司法」は実現する。市民が主体的に参加する意識を醸成する方策に、さらに知恵を絞りたい。

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