社説

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 人工知能(AI)を備えたロボット兵器が標的を探し出して攻撃する。SF映画「ターミネーター」のような世界が現実のものとなりつつある。

 完全に自動化されれば、敵を選別して破壊、殺傷するまでの動きに人間が介在しなくなる。懸念されるのは、戦時国際法で禁止される民間人の殺傷など、想定外の暴走や被害の拡大だ。

 米国やロシアなどが開発を急ぐ中、3月開催された国連公式専門家会議で、日本政府は「人間の制御が不可欠だ」と主張し、規制の必要性をうたう文書の取りまとめを主張した。8月に再開される議論を後押しする動きとして期待されている。

 軍事面では、AI兵器は銃、核兵器に次ぐ「第三の革命」とされるが、重大な人道上の問題がある。日本は実効ある規制論議の先頭に立つべきだ。

 ところが、政府の主張には煮え切らないところがある。

 「全面禁止」を求めるアフリカや中南米諸国などと違い、AI兵器を完全には否定していない。むしろ省力化などの観点から、開発や配備には積極的な姿勢を示している。

 もともと日本は禁止が民生用技術に響くと考え、今回も「AI技術の平和利用を妨げてはならない」と強調した。禁止条約制定は時期尚早との立場だ。

 専門家会議での議論は3年目に入ったが、武器輸出大国の米国、ロシアが規制交渉入りに反対している。日本もドイツなどとともに、全面禁止の主張とは一線を画している。

 その姿は、米国の「核の傘」の下で核兵器禁止条約に反対する政府の対応と重なる。本気度が疑われるようでは、規制論議をリードすることは難しい。

 今もドローンなどを駆使した無人攻撃が、他者を傷つけることへの罪悪感を弱めているとされる。反撃されても機械が壊れるだけで、自軍兵士は血を流さない。さらに進んで、機械任せで自動的に人を殺傷するようになれば、ますます倫理面のハードルが下がる恐れがある。

 技術が高度化すれば、AI兵器の保有国は圧倒的に優位に立つ。一方で標的にされる側は憎悪を深め、テロが広がる事態も想定される。歯止めをかけるには人間の英知と決断が必要だ。

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