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 認知症対策の国家戦略ともいえる大綱の素案を、政府が有識者会議に示した。従来の方針である認知症になっても暮らしやすい社会を目指す「共生」に加え、「予防」をもう一つの柱に据えたのが特徴だ。

 「70代の発症を10年間で1歳遅らせる」などと、認知症の人数を抑える数値目標を初めて掲げた。6月の関係閣僚会議で大綱を決定する。

 確かに、予防は大切である。国民の関心も高い。しかし、認知症の原因ははっきり分かっていない。確実な予防法も確立されていないのが現状だ。

 そうした中、予防の重要性を強調しすぎると「頑張れば認知症にならない」「発症した人は努力不足」という誤った考えが広がりかねない。

 年を重ねれば誰もが認知症になる可能性がある、と理解することから始めたい。発症しても希望を失わず、自分らしく暮らせる共生社会の実現が望まれる。早期発見や重症化を遅らせるための予防、治療法の研究開発に力を入れてほしい。

 政府が数値目標を唐突に持ちだしたのは、膨らむ一方の社会保障費を抑える狙いからだ。

 厚生労働省の推計によると、認知症の高齢者は2015年の520万人が、団塊世代が全員75歳以上になる25年には700万人に増える。65歳以上の5人に1人に当たる。

 素案は予防策として公民館などでの体操や茶話会を挙げた。運動や人との交流が発症を遅らせる可能性があるとされるが、科学的根拠が不十分なため研究も進めるという。

 気掛かりなのは、家族が介護することが前提のようになっている点だ。認知症の人と家族の会兵庫県支部の熊谷光子代表は「高齢夫婦や1人暮らしのお年寄りが増えている。介護保険をより利用しやすく、安心できる制度にしてほしい」と話す。

 有識者会議は企業経営者や研究者で構成し、認知症の本人やその家族は入らなかった。認知症の人たちのグループは厚労相に「何のため、誰のための施策かを考えて」と訴えた。

 実効ある取り組みを進めるためにも、政府は当事者の声に耳を傾け、施策に反映させる必要がある。

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