社説

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 国際情勢が目まぐるしく変化する中、2019年版外交青書で重大な記述の変更があった。

 特に目を引くのが、北方領土問題を巡る部分である。18年版まであった「北方四島は日本に帰属する」との表現が消え、「問題を解決して平和条約を締結」するとの言い回しにとどめた。日本の法的立場についての説明を回避した形だ。

 ロシアを刺激する表現を控え、難航する領土交渉の進展につなげる狙いだろう。だが、領土問題の原則に関わる部分を削除したのは、譲歩しすぎの感が否めない。野党だけでなく、自民党内からも「日本の立場を弱める」などと批判が出ている。

 自らの手で決着を急ぐ安倍晋三首相は、従来の4島返還から、歯舞、色丹の2島返還を軸にした交渉にかじを切ったとの見方が強まっている。河野太郎外相は、記述変更について「総合的に勘案した。政府の法的立場に変わりはない」と説明したが、これでは不十分だ。

 外交青書は、日本の外交活動を内外に広く発信する目的がある。なぜ表現を変えたのか。どんな展望でロシアと交渉を進めようとしているのか。首相自ら国民に説明する必要がある。

 北朝鮮に関する記述では、18年版にあった「圧力を最大限まで高めていく」などの文言が削除された。その後、首相は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と条件を付けずに首脳会談の開催を目指す考えを表明した。

 圧力一辺倒から転じ、対話による拉致問題の解決を探ろうとする意図は理解できる。だが、場当たり的な対応で相手を交渉の場に引き出せるのか。

 一方、韓国に対しては元徴用工判決や自衛隊機へのレーダー照射などを挙げ「韓国側による否定的な動きが相次ぎ、非常に厳しい状況」と指摘した。ロシアや北朝鮮向けの表現と比べ、強硬姿勢を際立たせた。

 日韓関係は国交正常化後最悪ともいわれる。東アジア地域で同じ価値観を共有する国同士がこのままでいいはずがない。

 首相は、こうした懸念について説明を避けている。20カ国・地域(G20)首脳会合など重要な外交日程を前に、首相は外交の現状認識と目指す方向を国民に明確に示すべきだ。

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