社説

  • 印刷

 旧優生保護法下で知的障害を理由に不妊手術を強制された宮城県の女性2人が国に損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は原告の訴えを退けた。賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」を過ぎているとの判断だ。

 法改正で強制手術の規定が廃止されたのは1996年で、その時点で2人の手術から20年以上が過ぎていた。差別的な政策の下で声を上げられなかった被害者に寄り添わない、しゃくし定規の法解釈というしかない。

 ただ、判決は旧法の規定が「個人の尊厳を踏みにじり悲惨だ」として、幸福追求権を定めた憲法13条に違反するとの判断を示した。

 被害者らは、子を産み育てるかどうかの自己決定権を奪われた。誤った政策を推進した国や地方自治体、医療界などは、人権侵害に対する戒めとして、重く受け止めねばならない。

 この問題では、神戸地裁など全国7地裁で被害者らが相次いで国家賠償訴訟を起こした。初の司法判断となる仙台の判決が注目されたが、当事者の願いには沿わない結果となった。

 旧法では、少なくとも約2万5千人に不妊手術が行われ、うち約1万6500人は同意のないまま強制されたとされる。2人の原告は10代半ばで不妊手術を受け、結婚の機会を失ったり夫との関係が破綻したりしたとして、合わせて7千万円余りの賠償を求めていた。

 憲法17条は、国民が国などに賠償を求める権利を定める。一方、民法には請求権が消滅する除斥期間の規定がある。

 判決は「除斥期間の適用は違憲ではない」としたが、法改正や救済措置の遅れという国の不作為が招いた不利益を、もっと考慮すべきではないか。

 原告は判決を不服として控訴する意向だ。控訴審では踏み込んだ判断を求めたい。他の地裁もこの判決を前例とせず、訴えによく耳を傾けてほしい。

 国会は一律320万円の一時金支給を柱とする救済法を4月に成立させたが、責任の所在が曖昧で、訴訟での賠償請求額にも隔たりがある。安倍晋三首相の反省とおわびの談話も国の責任には触れなかった。被害者が納得できる救済について、もっと真摯(しんし)に知恵を絞るべきだ。

社説の最新
もっと見る

天気(7月17日)

  • 30℃
  • 24℃
  • 20%

  • 32℃
  • 21℃
  • 20%

  • 31℃
  • 24℃
  • 30%

  • 32℃
  • 24℃
  • 20%

お知らせ